君との距離-1
距離が近すぎて…身動きがとれない。
こんなに苦しいなんて、思わなかったよ。
夕飯後、いつものように部屋でテレビを見る。そして、ちらりと部屋の隅に目をやる。
バァーン…!
すると、たまにこうやって突然ドアが開くの。
「よぉ」
「ちょっと〜ノックくらいしてよ!」
「あ〜まぁ、いいじゃん」
「着替え中だったらどーすんのさっ!」
「ははっ、そりゃラッキーだな」
そうやって茶化すように笑う飛鳥(アスカ)。
ちなみに男。
呆れたようにため息をつくのは私、准(ジュン)。
当たり前だけど女。
女みたいな名前の飛鳥と男みたいな名前の私は、よくある"幼なじみ"ってやつ。
「夕飯何食った?」
「何でもいいじゃん」
「当ててやろーか?お好み焼きだろ?」
私は思わず鏡で顔に何かついてないか確認する。
すると飛鳥はケタケタと声をたてて笑った。
「二階上がって来るとき、おばさんにお好み焼きいるかって聞かれたんだよ」
「……あっそ」
ふいっと顔を逸らしリモコンに手を伸ばす。
丁度見たいドラマの始まる時間なのだ。
「あ、これ准も見てんの?」
「うん、出演者が好きな人ばっかりだから」
「俺、話も結構好き」
ドラマが始まると私は黙って静かに見る。
だけど、飛鳥は「あいつバカだろ」とか小言が多い。
「うるさいなぁ!黙って見なよ!」
「だってこれ、突っ込まずにはいられねーじゃん」
「自分の家で見ろ!!」
「姉貴が、俺がいるとうるせーから嫌だって言うんだよ」
「…私だって嫌なんだけど?」
こういう時、飛鳥はコンビニ袋の中から私の好きなお菓子とジュースを取り出す。
私のご機嫌とりのために。
これでいつも私は許してしまう。
だって飛鳥は私の好きなもの、嫌いなものを全部知ってる。
そして、いつも隣りで見せる笑顔が好きなのだ。