君との距離-2
ドラマがクライマックスに差しかかったとき、低い音と微かな振動が床を伝った。
「飛鳥、携帯鳴ってる」
「ん?おぉ」
私はテレビの音を小さくする。そしてまた黙って見始める。
電話が彼女からだって分かっているから…。
パチンと音をたてて携帯をズボンのポケットにしまうと、飛鳥は私の隣りですっと立ち上がった。
「行くわ」
「彼女?」
「おう」
「てか、あんた何しに来たわけ?」
「別に何も…あ、ドラマ見に」
「……あっそ」
飛鳥は缶ジュースを一気に飲み終えると、私の鏡で器用に髪を整える。
私は部屋の隅に放置されたゲーム機に目がいった。
突然持ってきて、そのまま置いてある飛鳥の私物。
「飛鳥!いい加減あのゲーム持って帰ってよね」
「ん?お〜また今度な!」
「いっつもそれ」
「ははっ、じゃーいってきます」
「…いってらっしゃい」
幼なじみは、いつまでたっても隣りにいれる特等席。
理由なく一緒にいれる関係。でも決して一線を越えられない。
ずっと、二番手なのだ。
それでも隣りにいたいから、この距離を保ち続けるの。
相変わらず私の部屋の隅にある飛鳥のゲーム機は、幼なじみのしるし。
明後日らへんになったら、きっとまた飛鳥は理由もなく来るのだろう。
そしてまた私は、"いってらっしゃい"と見送るのだ…。
END