jam! 第1話 『その日、僕に起きた出来事』-4
――ピンポーン♪――
割と間抜けな音がした。
緊張感が無いというかなんというか…。
……反応が無い。聞こえなかったのか?ならもう一回。
――ピンポーン♪――
………………。
再び、静寂。
……いいだろう。そっちがその気なら仕方ない。
こっちも本気で行くぞ!!
連打連打連打連打連打連打連打連打連打ァ!!
ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポーン…
ぬぅ。まだ出ないか。
ならばもう一回……
「あのー…、何してるんですか?」
ピタッ。
僕の動きが止まる。振り返ると、見たところ僕と同じか少し下くらいの少女が立っていた。
相手は不思議そうな、…いやむしろ不審そうな顔で見ている。
そりゃチャイムを連打してる奴がいたとしたら、誰だって怪しがるに決まっている。問題はその怪しさ満点なのが僕だという事だ。
……気まずい沈黙が包む。
「えーっとですね、これはその……」
「あ!もしかしてお客さんですか?」
「へ?君……ここの人?」
もしかして、この女の子が探偵……?
「はい。ここで助手をしている波里 悠梨(なみさと ゆうり)と言います。……でもおかしいですねぇ。確か中に秋次さんがいたはずなんですが…」
助手か。それで秋次さんとやらが探偵なのだろう。
「秋次さーん、お客さんですよー!」
ガチャリとドアを開けて悠梨ちゃんが中に入る。
とりあえず僕もお邪魔することにした。
事務所の中はビルの古さに比べて意外な程新しく、綺麗に片付いていた。
「おかしいな…。いるはずなんだけど。秋次さーん……………あ。」
そして、僕と悠梨ちゃんは同時に見つけた。
事務所の奥、テーブルの傍の革のソファーの上に横たわり……アイマスクまでしてすやすやと眠る、おそらく二階堂 秋次その人を。
「「…………………。」」
二人分の沈黙が痛い。
つかつかとソファーへと歩みよる悠梨ちゃん。
……心なしか、彼女の周りに怒りのオーラのようなモノが見える気がする。
「お客さんが来たって……」
言いつつガッ!とソファーの端を掴み、
「言ってるでしょうがッ!!」
そのまま力任せに前に引き倒した。
ベシャッ!!
「へぶっ!?」
ソファーから落とされ、為す術も無く床にたたき付けられた哀れな探偵は、変な声を出して動かなくなった。