cool garden-1
リョウコとの出会いは、暇つぶしに行ったとある合コンだった。
なりゆきで俺たちはつきあう事になった。
どんな会話をして何を言ってそうなったかは覚えてないけど。
「ノブ、リョウコちゃんとつきあってるんだって?」
「いいだろう。つか今知ったの?あん時の帰りからだけど。」
「えっ、まぢで!?つー事は…1ヵ月くらい前じゃんか!!うわーずるいずるい!!」
「ヒロー、今日CDショップ寄ってかね?」
「あっ、行く行く!ノブも行く?」
「ムリムリ。」
「えーなんでよー。」
「リョウコとデェト。」
「あ、そう。帰れ帰れ。お前なんか愛しのリョウコのトコ行っちゃえ!」
「言われなくても行きますよ!じゃーな。」
リョウコはすでに駅前の喫茶店の前で待っていた。
「遅いよ〜。」
「お前が早いんだよ。」
「だって今日大学終わるの早かったんだもん。家にいても暇だったからさぁ。」
「あぁそう…」
「へへ。行こ。」
そう言ってリョウコが立ち上がった瞬間だった。人の悲鳴と、車のクラクション、それとガラスの割れる音が聞こえたのは。
俺の立っている横のアスファルトに赤い液体が飛び散った。
「ノブ!」
リョウコのその声と同時に俺は右から強い衝撃を受けた。
視界からはリョウコが消え、かわりに周りの人間や景色が高速道路を走っているときのような速さで流れた。
あのときと同じだ。
俺の母親にあたる女が、俺を窓から突き落とした時と。
『あんたなんかいなくなればいい』
そう叫びながら。
「…ノブ…」
リョウコの声が聞こえて、俺は頭を上げた。
トラックが突っ込んでいて、ガラスが一面に散らばっていた。
「…痛い…」
「リョウコ…」
全身の痛みのせいで動けなかったが頭だけはリョウコの方に向けた。
足に刺さったガラスは皮膚を突き刺し血を流していた。
着ている白いキャミソールも紅く染まっている。
「…ノブ…あたし…」
薄れる意識の中、救急車のサイレンとリョウコの声が頭に響いた。
『…ノブ、あたし…大丈夫だよ…。死にたくないもん。…まだ死ねないよ…。』
『あんたはあたしの子供じゃないよ』
『ノブ。愛してるよ』
『大っ嫌い。死ねばいいのに』
記憶の中であの女とリョウコが交代に現れては消える。
『なんで生きてんのよ!』
その声と体中の激痛で目を覚ました。
見慣れない白い天井、白いカーテン、白い布団。
あの後すぐに病院に運ばれたとわかった。
区切られたカーテンの向こうで、リョウコはまだ眠っている。
そう思いたかった。
「…っ…」
激痛に耐えながら体を起こして立ち上がり、カーテンを開こうとしたが、それをつかんだまま手を動かす事ができなかった。
…もし死んでいたら…?
リョウコの体からは多量の血液が流れていたはずだ。
あの量の血が人間の体から抜ければ、その人間は死に至るだろう。
いや、俺だって結構な量の血を流した。
周りにもたくさん倒れている奴がいた。
リョウコだけの血ではない…。
俺はつかんだままのカーテンを恐る恐る開けた。
カーテンはもう1枚あって、リョウコと俺のベッドの間を仕切っていた。
それに手をかけようと腕を伸ばした時、リョウコが寝ているであろう場所から声が聞こえた。