光の風 〈地球篇〉-8
「貴方の言っている事は正しい。しかし妙ですね。」
キースの言葉に貴未は表情で答えた。
「なぜ貴方が彼女と幼い頃に会えたのか。」
ざわめきが大きくなっていく。その言葉の意味を知りたい、貴未も日向も思いが態度にでていた。自然と前のめりになる。
「彼女の幼い頃など本当の事は誰も知れない。今はもう昔、ここは彼女が生まれてから200年後の未来です。」
あまりの衝撃に時が止まった気がした。
目はどこを見ているのか分からない、意識もくらくらしてきた。動揺しすぎて貴未は後ろに崩れそうになり数歩下がった。
「200年…。」
やっと出てきた言葉がそれだった。日向もさすがに貴未が心配になり、彼の名を呼びながら近づく。キースは二人をただ見ていた。
「貴未さん、とおっしゃいましたね?」
「はい。」
まだ揺らぐ気持ちの中、キースの問いかけに貴未は答えた。
「あなたはマチェリラと知り合いで会いにきた、とおっしゃった。」
「はい。」
「でもそれは現実的に有り得ない事です。お分りでしょう?」
キースの言葉に貴未は何も言う事ができなかった。少しずつ嫌な気配がしている。キースの静かな気配はやがて攻撃的なものへと変化していった。
「そして貴方はさらにこう言った。カリオ、と。」
キースの目付きが鋭い、やがてどこからか聖職者の衣裳をまとった群衆が現れ遠巻きに貴未達を囲んだ。
一気に空気が変わり、緊張感が高まる。
「貴未さん、貴方はどこでその名を?」
周りに散っていた意識を瞬間的にキースは自分の元に取り戻した。
「その名は限られた者しか知り得ない。貴方はどこでその名を知ったのか!」
キースの声に周りの聖職者達が構えた。少し近づいた彼らに二人は自然に構える。日向は貴未に寄り添うように近寄って彼の名を呼んだ。
「力付くにでも教えていただかねばならない。」
キースは言葉と同時に左手を胸の位置まであげた。それを合図に群衆が動きだす、少しずつ貴未達との距離を縮めていった。