光の風 〈地球篇〉-2
「貴未の故郷ってどこ？」
「カリオ。」
少し遠慮気味に尋ねた事に貴未は真っすぐ返してきた。しかし日向にその名前は分からない。返ってきた答えを呟いてみる、その行動に貴未は微笑んだ。
「こことは違う国に答えがあるんだ。生きているかどうか分からないけど、知り合いがいる。」
空間が違うと時の流れも違うからと貴未は続けた。貴未がシードゥルサにいる間にどれだけ時間が流れているか分からない。一瞬かも、千年かもしれない、それでも賭けるしかないのだ。
「ついていくよ？僕に役目があるなら付いていく。」
日向の素直な言葉は貴未の心を暖めた。照れくささから少しはにかむ。
「ありがとう。」
「貴未は地球に行った？あのキーマンも連れてか？」
シードゥルサのカルサの私室、聖はやっと捕まえた部屋の主を前にして驚きの声を上げていた。今聞かされた事にその場にいたサルス、紅奈も同じように驚いている。
「そうだ。」
「おらんとは思てたけど…まさか、なぁ…聖。」
紅奈の問い掛けに聖は動揺して反応は見せなかった。地球は二人の故郷、そこに今貴未達はいる。複雑な思いの中は誰にも分からなかったが、聖にとっては大きな衝撃であった事は十分に伝わった。
「何しに…貴未は何しに行ってんねや？」
ようやく出た聖の声に答えるのはカルサしかいない。カルサはいつもと同じように冷静さを保ちながら淡々と答えた。
「調査だ。」
「調査て何の？」
決して口調が強い訳ではないが、まるで問いつめるように聖の声がカルサに向けられた。すぐには答えない、少し聖の様子を見てからカルサは口を開いた。
「光の精霊だ。」
予想外の答えに一同は言葉を失い、疑問符を持った。特に予想していた答えがあった訳ではないが、誰もの頭の中にかすりもしない言葉だった。
「光の精霊？…それは一体。」
サルスが思わず口にしてしまった、しかしそれは皆の言葉でもあった。
「前回の事で考え直さなければいけない所がいくつかでてきた。」
前回の事、冒頭で全てが分かってしまった。あの時、たった一人の侵入者に神と称される御剣の戦士を二人も倒されてしまった。助けがなければどうなっていたかなんて、考えるだけでも恐ろしい。
「新たな戦力、って事やな。」
聖の言葉にカルサは頷き、再び話を始めた。
「力は一つでも多くあった方がいい。今ある可能性にかけて貴未を派遣した。」
「地球にそれがあるいう訳か？」
「いや。入り口が、と言った方が正しいな。」
なかなか直接答えに結び付かないのはもったいぶっているからなのだろうか。カルサはあくまで聖から投げかけられた質問に答えていくだけだった。