光の風 〈地球篇〉-14
「貴未さん、覚えていますか?」
圭はそれを手のひらに乗せたまま貴未に近づく。暗くてよく見えない、それが白いのが救いだった。
「白い球体?見覚えは…。」
「ここからです。」
圭の言葉を引き金に、球体は光を放った。淡く、それでいて強い光は球体の中身をさらすように透けていく。その姿を見た貴未の表情は変わった。
「貴未さん、覚えていますか?」
「これはオレ達の!?」
「カリオへの命綱です。」
貴未は圭の手の上の球体から目が離せなかった。あの時最後に見た時から失った大切なものの1つ。時を越えてもここに存在していた。
光り透けた球体の中は、からくり仕掛け。いくつもの歯車が不思議にも小さく回りながら動いている。
それも記憶のとおりだった。
「貴未さん、扉はここに。そしてマチェリラの魂もこの中にあります。」
「どういうことだ?」
「マチェリラの魂を受け継ぐとはそういうこと。」
この球体を受け継ぐことでマチェリラの魂も、扉さえも受け継ぐことになると圭は続けた。あまりの衝撃に貴未は言葉を失った。
「私たちは代々これを〈永〉と呼んでいます。」
その時、一瞬にして貴未の世界からは音が消え、一つの記憶が頭の中をこだました。その記憶の中で聞こえる声はただ一つ、貴未と呼ぶ少女の声。
「はるか…!?」
それは失った貴未の片翼、傍にいるべき存在だった。
「どういう事なんだ?訳が分からない、何でマチェリラはこんな事までして?それに永という名は…っ!?」
「マチェリラを呼びます。」
明らかに動揺している貴未を制するように圭は告げた。