あなたのいる風景-1
「あいつの誕生日、来月の20日なんだ。」
涼は照れくさそうな顔をして言う。
知らなかった。あの娘の誕生日が私と2日違いなんて。
もう乙女座の恋愛運がよくても素直に喜べない。
「何あげたらいいかなぁ?」
あなたが隣にいるのに、彼女はそれ以上何を望むの?
「お前、国語何点だった?」
得意気な顔。
「80点。涼は?」
「92点!」
小説の主人公の気持ちは分かっても、私の気持ちは分からないんだね。
「有紀!」
私、有紀って名前ならよかった。そうしたら名前だけでも愛されたのに。
「お前、友達にしておくにはもったいない。」
嫌い。
「数学ってちっとも時間過ぎないな。」
1分がもっともっと長ければいい。あなたと少しでも長く一緒にいれるから。
私はいつもあなたの背中を見てるけど、あなたの目はいつも違う方を見てる。
「お前のこと、友達がかわいいって言ってたよ。」
あなたに好かれないなら、この顔も体もいらない。
卒業式が終わったら、もう会えなくなる。
全く同じ未来が来ても構わないから、入学式からやり直したい。
「3年間、ありがとな。」
涼、涼…。
「泣くなよ。」
嫌だ、離れたくない。
「元気でな。」
ずっと好きだった。
でも、最後まで言えなかった。
「ありがとう。」
あなたを好きになって幸せでした。そして、さよなら。
涼…。