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『ゲームメイカー』
【その他 官能小説】

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『ゲームメイカー』-1

 その日、俺は退屈凌ぎに宛てもなく車を走らせていた。ふと時計に目をやると時刻は午前二時を過ぎている。さすがに車もまばらになり、気晴らしのドライブにはうってつけだった。

「腹減ったなぁ…」

 しばらく走り続け、軽い空腹感を覚えた俺は適当なファミレスに車を突っ込むと店内に入った。
 軽めの食事を終えて、コーヒーを飲みながら煙草を燻らせていると、店の一角がひときわ騒がしくなる。

「やだっ!やめてくださいっ!」
「いいじゃねぇか、一人だったんだろ?俺らと付き合えよ。なぁ?」

 随分と強引なナンパだな。ま、俺には関係ないけど……

 所詮は他人事だと思いながらも、何気なくやりとりを見ていると女の方と目が合ってしまう。その眼差しは助けを求めているみたいだった。

ヤバイな、厄介事は御免だぜ。ンな目で見るなって……

(はぁ……)
 まったく自分のお人好しさ加減に呆れる。結局、俺は立ち上がり、ゆっくりと揉めている最中へと歩み寄った。

「よぉ!やっぱ、お前かぁ?久しぶり!五年振り……いや、もっとか?元気そうだな……んで?兄ちゃん達、俺のツレになんか用かい?」

 我ながら演技派だ。軽く一別くれると、奴等はすごすごと退散した。店員に頼んで相席にしてもらい、俺はその女と向かい合う。

「あ、ありが……」
「礼はまだ早い……あんた、俺を信じるか?」

 軽く安堵の溜息を漏らしながら言いかけた女に、俺は声のトーンを落として言葉尻を引ったくる様にして言った。
 何故なら一旦、引き下がったと思っていた奴等が疑りの目で遠巻きにこっちを見ている事に不穏な空気を感じていたからだ。

「どうなんだ?あんまりのんびりできないぜ?横目で見てみな……疑ってやがる……チッ!」

 俺の舌打ちに反応するように女はチラッと横を見ると、肩を震わせてこっちに向き直り小さく頷く。その仕草に俺は頷き返し、そのまま伝票を掴んで立ち上がると悠然さを装い店を出ると車に乗り込んだ。


 素早く駐車場から走り出し、バックミラーで追って来る車が無い事を確認すると、俺はようやく緊張を解いて溜息をつく。
 やれやれだ……窓を開け、煙草に火を付けると大きく吸い込んで煙を吐き出した。

「あ、ありがとうございました……」

 そんな仕草に危機が去った事を感じ取ったのか、女はそう言う。

「あんたなぁ……あれこれ詮索する気はねぇけど、危険だぜ?あンな時間に一人じゃ……」
「ごめんなさい、終電逃しちゃって……本当に助かりました」

 俺は返事の代わりに、ふんっと鼻を鳴らしてハンドルを持ち替えた。

「あたし、葛原(くずはら)…葛原翠(みどり)って言います。あの…名前、教えて頂けませんか?」
「啓介……功刀(くぬぎ)啓介だ」
「そう……功刀さんっていうんですか……改めて、功刀さんありがとうございました」

 そう言って翠は頭を下げた。俺は窓の外に煙草を弾いて彼女を見る。


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