『ゲームメイカー』-3
「俺もあいつらと大して変わらんぜ?」
横槍を入れる様で些か気は引けたが、思わず俺は口を挟む。
「でも、貴男は『信じるか?』って聞いてくれたでしょ?それが嬉しかったの……」
「…あンたなぁ……信用しすぎだぜ」
仏頂面のまま俺は缶ビールを煽る。
「無愛想で乱暴な話し方……でも、あたしの事気遣ってくれてる…だから、貴男なら……って」
彼氏の代わりか……ま、そんなオチだろうな。ある意味予想通りの展開に体は酔っていても、頭は冷めていく。
「風呂の用意してくる。さっぱりしたいしな」
会話を切るように立ち上がり、俺はバスルームに向かった。手早く用意して戻るとビールを飲む。そして間が持てず煙草を咥える。無言の時間を持て余し、俺はそんな動作を繰り返していた。
「あの……」
「ん?」
沈黙に耐え兼ねたのだろうか、おずおずと彼女から話しかけてきた。
「功刀さん……ひょっとして、怒ってますか?」
「何でそう思う?」
「だって……」
そう言って翠は目を伏せた。彼女のせいじゃないとわかっていても何かやる瀬ない。つまりは意気消沈してしまった訳だ。
「怒っちゃいないよ。心配しなさんな……風呂、入ってくる」
そう言って翠を残したまま、俺はバスルームに行った。
熱いシャワーを浴び、バスタブに身を沈める。さてと、この後どうしたもんかな?白けた気分も拭えないし、このままベッドで眠っちまうのも悪くない。変なプライドと思われるかもしれないが、当て馬にされるのが面白くないのである。
「功刀さん…」
不意に話し掛けられて扉に目をやると、いつの間に来ていたのか摺りガラスに映る彼女が話しかけてきた。
「ン?どうした?」
「一緒に入っても……いいですか?」
「あぁ、構わないよ」
摺りガラスの向こうで彼女は小さく頷くと、服を脱いでいく。やがて静かに扉が開き、タオルで前を隠して翠は入ってきた。横を向いて片膝をつくと彼女はシャワーを浴び始める。思った通り、いい体してる………が、俺の気分は盛り上がって来なかった。
「無理すんなって、別に恩着せるつもりなんか無いんだから…」
「で、でも……」
「いいんだって、それよりこっちに入りな。風邪引くぜ?俺はもう出るから……」
バスタブから身体を起こした俺を驚いた顔で彼女は見た。そして首を左右に振って呟く。
「…い、嫌……行かないで……」
「え?」
「独りは嫌……お願い、一緒にいて……」
すがり付くような目で翠は俺を見ている。理由はわからないが、気のせいか微かに体が震えているようにも見えた。