『ゲームメイカー』-28
「ど、どこまでお人好しなの!?気付きなさいよ!あたしに騙されてたのよ!?」
涙声?翠が泣いてるのか?……あぁ…なんだか眠くなってきたなぁ……
「く、悔しくないの!?憎みなさいよ!……しっかりしなさいよ!!」
「……翠……愛して、る…よ…」
「そんな言葉なんて聞きたくない!!……あたしを罵倒してよ!言いたいコトだけ言って勝手に死ぬなんて許さないから!!」
俺は残された力で、すでに鉛のように重くなった腕をゆっくりと持ち上げて翠の頭を二度、弱々しく叩いた。と同時に体の力が抜けて、彼女の頬を滑り俺の腕は地面へ落ちた。
その瞬間、彼女の目が大きく見開かれたように見えたのは、きっと見間違いだろう。
やがて全ての音が消えて静寂が訪れる。目を開けているのも辛い。これが死ぬという事なんだろうか?意外に呆気ないものだな。俺を揺さ振りながら何か翠が言っているが、俺の耳にはもう聞こえてはいない。
意識が途切れる刹那、俺は考えていた。彼女にとって、あの日々はゲームだったのだろうと。そして俺はゲームの駒に過ぎなかった。ただ、それだけの事なのだ。
彼女の誤算は俺の馬鹿さ加減だろう。だから最後に取り乱したのか?いや、きっとそれすらも演技なのかもしれない。
何故なら、彼女こそが《ゲームメイカー》なのだから……
最期に小さく笑みを浮かべ、俺の意識はそこで………
END