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『ゲームメイカー』
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『ゲームメイカー』-14

「着いたぜ……」
「……はい……」

 後部座席から大きなバッグを取り両手に抱えると、彼女はドアに手を掛けた。

「あの…」
「ン?…」
「……ううん……ありがとうございました」
「ああ…」

 翠は車を降りて傍らに立ち、俺は助手席のウインドゥを下ろして彼女を見る。寂し気な笑顔で小さく頭を下げると、ゆっくりと後ろを向いて翠は駅へと歩き出していった。

「畜生ッ!」

 去って行く背中が人波に紛れて見えなくなるまで見ていた俺は荒々しくドアを開けて走り出す。鈍った身体に全力疾走はキツイが、駅の構内で何とか翠に追い付いた。

「翠!!」

 突然掛けられた声に驚いた様に彼女は振り返って俺を見る。

「け、啓介さん!?」

 傍まで行ったものの、だらしなく息が上がって次の言葉が出て来ない……二、三回深呼吸して、やっと落ち着いた俺は口を開いた。

「乗れよ、車に……」
「で、でも……」
「無理にとは言わない、お前の好きにしたらいい。一服する間だけ車は停めておくから」

 それだけ言うと、俺はなるべくゆっくりとした足取りで車に戻り、煙草を咥えて火を付けた。

なんであんなコトを……一体どうしちまったんだ俺は?

 自分の取った行動に困惑しつつも、小さく開けた窓の隙間から煙が外へ流れていくのをぼんやりと眺めていたら、助手席の窓が小さくノックされた。

「乗れよ…」

 ウインドウを下ろし、振り向きもせず俺が言うと、静かにドアが開いていく。

「あ、あの……」
「車……出すぜ」

 後部座席に荷物を乗せて、翠が座席に座るのを確認すると俺は車を走らせ始めた。



 彼女(翠)の瞳に俺(啓介)は一体どんな顔で映っていたのだろう?黙々とハンドルを握る俺の隣りで彼女もまた無言だった。

「あ、あの……啓介さん?」

 先に沈黙を破ったのは翠の方だ。

「何だ?」
「な、何だって言われると……」

 翠は戸惑っているようだった。しかし、それ以上に俺は自分のとった行動に戸惑っている。やがて、宛てもなく走らせていた車を人気の無い場所に止めると、シートベルトを外してひと息付いて彼女を見た。


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