甘辛ゾーン-8
………ん?んんっ?
急に私の第三脳髄がビビビッときました。いわゆる電波キャッチ。
故人は言いました。
「名付け候補が決まらなければ、愛おしい者の名にすればいいじゃない」と。
故人の友達が言いました。
「だけどそのまますぎると却って変だから、少々アレンジするのも大事」と。
「今からあなたはシュウちゃんです」
「……ふ」
えと。
二番煎じかよ、とでも言いたかったかのように躊躇いがちにため息を吐いた…っぽいのですが。
「じゃあシャムちゃんとか…」
「にう♪」
明らかですね。
「別にいいですよ…」
「?」
ネーミングセンスは我ながらに抜群だと言い聞かしてたはずなのに…
賽を投げ直すことはできませんかね。
いえ寧ろ賽子を投げ直して、某仮人生板遊技並の幸せを手に入れたいです。
最初から出目がずっと一の人生も悪くなさそうですしね。
◇
───駄目だ。
まったく勉強が捗らない。
あいつのせいで…。
《実は…スーパーでの買い物帰りに捨て猫…というより" 黒い子猫が段ボール箱の中におりまして "…拾ってきちゃったんです》
《" 鈴も首輪も付いてなくて "今の時点では飼い主が特定できなくて…せめて猿轡でも付い……間違えました》
《でも嬉しいことに" 幸い、弱ってはいませんでした "》
ホント、困るよなあ。
僕もあの時に思い出しておけばよかったんだけど。
…電話するか。
受話器を取り、的確にダイヤルを押していく。
ケータイは…凪は持ってるけど、僕は持っていない。
最近のはシステムがよく理解できないし、何よりもどこかの誰かさんに
嫌がらせをされそうで怖いのだ。
呼び出し音が鳴る。
一回目が終わり、二回目…が鳴る前にうるさい声が飛び出してきた。