甘辛ゾーン-6
「さあ、新世界の神になってみたくは無いですか?」
言い終わると同時に、猫ちゃんが猛烈な勢いで餌にがっついて…うお、早っ!
「…相当お腹が減ってたみたいですね」
マンガとかの世界でよくある{がつがつがつがつ}みたいな音が今にも聴こえそうです。
「…あっ…」
…ずっと忘れていましたが、この子の飼い主はいずこへ?
「猫さん」
「にゃ」
「あなたの…あなたを置いてった主はどんな人なのですか?」
「………」
二分間、私は子猫の瞳を見つめていました。
何かを訴えている様な気がするけれど…わかりませんでした。
「…なんだか、申し訳ない……です…」
「…………」
やはり人間は無力なのでしょうか。
動物の言葉もわからなくて、その意志さえもわからない。
ちょっぴり情けない。
…今、与えられるだけの温もりを分けてあげないと。そう思い、子猫を抱き抱えました。
「うな」
「どうにか…どうにかしてあなたを幸せにしてみせます」
「……にゃー」
子猫はその温かく湿った舌で、私の頬を舐めました。
ざらざらした感触。どこか気持ちの良い弾力。
飽きることなく、子猫は私の頬を舐め続けました。
次第に肌が敏感になってきて、さすがにこそばゆく感じてきました。
「ちょ、ちょっと、もう、くすぐったいですよ」
…しかし、止まってはくれません。
何故でしょう。
舐められれば舐められるほど、心が氷に触れた気分になります。
ああ、そうでした。
私、泣いていました。
あまりにも自分が無力すぎて、滝のように涙を溢れさせてました。
子猫は、私の無限の悲しみをずっと取り続けてくれてたみたいです。
これじゃあどっちの心が本当のディープブルーなのかわかりませんね。
「…ま、待って…!」
「…にぃ」
「…泣いてませんよ…泣いてませんから…いいんです。これは…汗ですから」
…胸が苦しいです。
考えれば、自慰ばかりの人生でした。
自慰は人間がする行為の中で、事前に考える必要がある行為…つまり、凄く疲れる行為だと思います。
私曰く『強がり』とも言います。