甘辛ゾーン-5
{ぐう、ぐうぅ〜}
…馬鹿なこと言ってる内に。
「う……」
腹鳴るは食物不足…。
そういや猫さん拾ってから結構な時間が経ってますね。家中動き回ったし。
…インスタント食物なんて保管してないし…。
「…私はお腹が空いたのですにゃー」
とりあえず自分にサービスということで、ね?
「ただい迷子の子猫ちゃん〜」
「にゃー」
「はいはいちゃんと買ってきましたよー」
まずは幅12cmほどあるお皿に、キャットフードをどさーっと盛りつけます。
そして、もう一つ同じお皿を用意して、それにミルクを適量注げば…あら不思議。
わずか20秒間、しかも簡単にできる、子猫ちゃん専用ご飯の出来上がり!
皆様も一度お試しになられてはどうでしょう?トッピングはご自由にお添え下さい。
「…さあ、どうですか」
今回は自信ありますよ。何せキャットフードですもの!
ミルク漬け無味食パンとはワケが違います!天と地の差レベルですよ。
ん?なんで私、市販の餌を堂々と自慢してるんです?
それはさておき、未だに口も付けてくれません。
『確認』はしてますが…お姉さん虚しい。
あら、あらら?
約五分は経過してますが、一向に口を開きませんね?
いえ…冷静に考えると、そりゃそうだーですよね。さっきのミルク漬けで警戒心も強くなっちゃいますよね…。
……………。
…諦めませんよ?
つまり、例えとして
ピーマン嫌いな子供の食事に、ピーマンを輪切りにしてオニオンスープとかに突っ込んでおけば、その内簡単に食べれるようになるんです。
そこから、発想の派生転換!
『暗示』をかければ良いのです!
「警戒してます、よね」
「……にゃ」
「わかってます。遠慮はしなくてもいいです。とりあえず、私が今から言うことを、耳の穴かっぽじってよく聞いて下さい」
「……」
人差し指を立て、ふりふりと揺らす。
この行為は、私の…そうですね、一種の癖、でもあるんです。
一部の人もしますね?説明するとき、注意するとき、などなど。
「このキャットフードはさっきのナマモノと違って、それはもう、すんごい高級品なのです」
「…」
「理解できます?高級品ですよ。下等生物が食べる物とは段違いなのです」
「……」
「つまりヴィップ専用…や、あなただけに許されたとでも言っていい。…これはあなたの様な猫だけが食べて良い食物なのです」
「………」
「ほら、会社の名前なんて……ザンジバル91?…存じませんが。とりあえず、すごく高級ですごく美味でいろいろとすーっごいのです!食べれば神です!」
「………」
ふ、私にはちゃんと聴こえました。
猫ちゃんの喉が動く音、否、唾を飲む音…ゴキュリという音が!