甘辛ゾーン-10
◇
「はあぁ…」
案外簡単じゃないんですね。
体毛とか残っちゃって、処理が非常に疲れます。
でも、
「シャムちゃん?」
「………」
バスタオルに包まれ気持ちよさそうに寝ている姿を見ると、
「ん…ふあ」
こっちまで眠たくなってしまいます。
今日はシャムちゃんの傍で極楽浄土に浸りますか。
……………。
いやっ!
ショウちゃんに電話しないと。何かお話がある様子でしたし…。
呼び出し音だけがループアンドループ。
出ませんね。
そりゃあ新しい日になる直前ですからね。
もう夢の世界ですね。
私もさっさと夢物語を完結させなくては。
それではみなさん。
チャンネルはそのままで!
馬鹿馬鹿しくて儚い日記帳は、馬鹿馬鹿しくも悲しい日記帳のままで充分だった。
あのころの自分はそんなふうに思っていた。
小学生は理想を描いて、成長していく。
けれども自分は成長できなかった。
中学生は色々な知識を頭に詰め込み、進化していく。
けれども自分は進化できなかった。
そして、今。
高校生になった自分は、着実に変化しつつある。
身体的にも、精神的にも。
記憶の日記帳を読み返す度に、シンボルが成り立っていく。
ここからが成長期なのかもしれない。
秀麻 凪という自分は、人生を踏み直した第一人種である。
蝉が鳴き木々がざわめき、向日葵が揺れ紫陽花の香りを感じたとき、
響きと衝撃が一斉にくるその瞬間、私は睡魔の誘惑に負けました。