傷跡-1
あの日の帰り道、私はどんな事を考えてただろう。
今日の夕飯…、今日見るテレビ…。幸せな日々はもう戻らない…。
秋風が冷たい。ランドセルがカタカタ鳴る。もう家は近い。
ブンブーン…。遠くからバイクの音が聞こえる。音はだんだん大きくなる。
後ろからバイクが来る。避けようと振り返ると、金髪、茶髪の若い男が4、5人。何人かと目が合った。
「おっ、おっ?」
その中の一人が変な声を出して、こっちを見る。怖かったから、目を反らして帰り道を急ぐ。
「いっちゃう?」
「Yes!」
ごほっ…。いきなり後ろから手で口を塞がれる。なっ…。全身から血の気が引く。汗が一気に吹き出る。
そのまま、バイクに乗せられ、男と男の真ん中に座らされた。
「た…。」
息が…苦しい。朦朧とする意識の中で、けたたましいバイク音だけが聞こえる…。
何とか意識は失わずにいた。降ろされたのは周りがガランとした倉庫だった。
前髪が汗か涙で、額に貼りついている。
「名前教えて!」
一人の男が、私の前にしゃがみ込む。手は私の鼻と口を解放して、腰に。ゲホッと咳き込む。
「あっ…。」
声が…出ない!
「6年3組 斉藤 彩夏ちゃんでしょ?ナプキン袋に書いてある。」
誰かが言う。
「ナプキンって生理のやつ!?」
数人で爆笑してる。体の震えが止まらない。
いきなり顔を近付けられ、唇をくっつけられる。
ファーストキス…。いつか好きな人とする日を夢見てた。
舌が入れられる。気持ち悪い。涙が溢れる。
「おっぱい何カップ?」
床に押し倒され、金髪の男に両手で胸を揉まれる。
「ひっ…。」
何とか、腰の手をふりほどいて逃げようとするけど、力が入らない。
「動いたら、殺すよ?」
ナイフを首筋に当てられる。こ…ろされ…る…。
お母さん…。母の笑顔が頭に浮かぶ。会いたい。涙が頬をつたう。死にたくない。