日記-1
病院へ駆け込んだ俺。
事前に部屋は聞いていたので止まることなく足を動かした。
エレベーターを待つのさえももどかしく、階段を使う。
駈け登っていると、全身から汗が噴出す。
なんでなんでこんなことに。
“お前”との時間を思い出すと、涙が勝手に溢れてくる。
“お前”の笑顔を思い出すと、喉がカラカラになり体が熱くなる。
そしてたどり着いたんだ。
“お前”のいる場所へ。
本当なら、ノックをして、挨拶から始めるべきだったろう。
でも俺は、そんなことなんて考えず、派手に扉を開けてしまった。
幸い、お母さんはいなかった。
でも、“お前”はいた。
あんなに細くて、抱き締めれば壊れてしまいそうだった“お前”が、もっともっと細く、弱くなっていた。
正直な話、呼吸をしていないかと思った。
だから、病室に入った途端、堰を切ったかのように涙が溢れて止まらなくなった。
けど、しっかりと呼吸をしている。
微かにしか聞こえない息遣いが、生きている証拠だ。
雰囲気は変わったけど、“お前”は“お前”のままだった。
眉をひそめて眠る“お前”の癖は変わっていなかった。
手を握ると、温かい。
ちゃんと生きているんだ。
なにより、半年振りに会えたんだ。
涙は止まらなかった。
十五分ほど経ったような気がした頃、お母さんが入ってきた。
“お前”によく似ていて驚いた。
すぐに頭を下げて挨拶をし、電話をくれたことにお礼を言った。
お母さんは、娘のためにそんなに泣いてくれてありがとうございます、と言ってくれた。
すぐにお母さんも泣き出した。
それから、今までの事情を聞いた。
迷惑をかけたくなかったから別れたこと。
迷惑をかけたくなかったから癌だということ言わなかったこと。
迷惑をかけたくなかったから……
俺は、もういいです、と告げると、再び涙と格闘した。