年上の事情。‐5-1
大きな手が、
ゆっくり、ゆっくり‥
一定のリズムであたしの頭を撫でる。
心地いい――‥
ミーティングルーム内。
ソファーで隣の片山にあたしはもたれかかっている。
彼はあたしが泣き止むまでずっと頭を撫でてくれた。
そして、
ゆっくり話し始める。
「‥異動の話しがきたとき、まずはじめにお前のことを考えた。
知っての通り、オレはマメな方じゃないし、仕事が忙しくなるといつもお前のこと、ほったらかしだったし‥」
あたしは黙ったまま首を横に振った。
「あのまま、付き合いを続けることはできなかった。
――お前が、仕事を辞めようとしていることも、なんとなく気付いてた。
ほんっとに、悩んだよ‥。
でも、まだ若くて、これからってヤツをオレのわがままで連れていくことはできなかった。」
――気付いていたんだ。
やっぱりかなわない、この人には何でも見透かされていた。
「でも、よかったよ。
連れていかなくて正解だった。」
「え?」
「お前の成長は、ずっと石原から聞いてたよ。
頑張ったな、亜季‥」
そう言いながらまた頭を撫でてくれた。
この男といると、自分はまだまだ子供なんだといつも思い知らされる。
「ねぇ、片山さん。
あたし綺麗になったでしょ?」
「ああ。
すごく、綺麗になった。」
あたしは、
あなたの為に、
あなたに追い付きたくて、この1年半過ごしてきたんだ。
でも、やっぱり一緒にいることはできないんだ‥。