年上の事情。‐5-2
「ねぇ、社長の娘さんってどんな人?」
「‥すごく素敵な人だよ。大人で、自分の意志をしっかり持った人だ。」
「よくもまぁ、元彼女を前にして言えるねぇ。」
あたしは、本気だけど、冗談めかして言う。
大人――か。
あたしには、
彼を支える力はなかった。
「‥ごめんな。大事にしてやれなくて――」
余計なことは、何も言わない。
言い訳めいたことは、何も言わない。
真っすぐにあたしを見つめて言う。
そんな目で見ないでよ‥
また、
泣きたくなるじゃないか‥
「もう‥誤らないで‥」
「そうだな。
――ありがとう。」
彼は言った。
この言葉で、あたしは体の力が抜けた。
彼と過ごした時間、ほったらかしにしていたと言う時間もすべて、あたしは幸せだった。
そして、
ただ追い付きたい一心でしていた仕事が、今では大好きになった。
あたしも彼に言いたい。
ありがとう――。
――‥次の日、
いつものように香ちゃんと一緒に家を出る。
「おはよう。昨日は、ご迷惑をおかけしました」
「片山さんと話せました?」
「うん。ありがとね」
香ちゃんはきっと、ずっと心配してくれていた。
「先輩、これからは何でも話してくださいよね!
しっかし、ほんとに片山さん結婚するんですよね〜」
「うん、あたしと付き合ってた頃からずっと社長から話が来てたみたい」
始めはずっと断っていたらしい。しかし、毎回毎回そういうワケにもいかず…
きっと片山のことだから、勢いで、出世の為だけで決めたわけではないはずだ。彼の言った通り、素敵な人に違いない。