永愛-3
それから…1年が過ぎた。その間、洋子からの連絡は一切なかった。
好きだ。本当に好きだ。この先も間違いなくずっと…。だからこそ…俺は離婚届にサインした。俺の人生より、彼女の人生の方が大切だから。本当は他の誰かとなんか幸せになってほしくない。でも…。まだ自分の気持ちが整理できないまま、俺はサインをした。
「辛かったね…。」
ベッドで横になったままで、桃花は言った。ヘルス嬢の女の子だ。ボーイに連れられ、店に入ってしまった。誰にも話せなかったことが初めて会う彼女には話せた。
「私、子供がいるのね。」
驚いた。体型もキレイだし、まだ若い。21才らしい。
「本当はお客さんに言ったらダメなんだけど。」
彼女は明るく笑いながら、過去を話してくれた。子供は今1才。OL時代に、妻子ある男性と付き合い、子供ができたらしい。
―ご飯食べに行かない?―
数日後、桃花からメールが来た。店には結局あの1回しか行ってない。
仕事が終わってから、食事に行った。子供も一緒だった。彼女に似て、目がくりくりしたかわいい女の子だった。男の人に慣れてないのか、俺と目が合うと泣いていた。
まだ小さいとは言え、子供の前で風俗の話をするのもあれだし、俺の仕事の話をしても…、こう考えると俺ってつくづく面白みのない奴だと思う。
「子供はいないの?」
話題を切り出したのは、彼女からだった。
「うん。欲しかったんだけど、なかなかね…。」
彼女は店の外では、今時のかわいい女の子だった。
それから度々、三人で食事に行ったり、遊びに行ったりした。
彼女を車で家に送る途中、たまたま俺のマンションの近くを通った。
「ここ俺の家の近くだよ。」
「…寄ってもいい?」
「えっ…?」
あのマンションには…洋子との思い出が詰まってる。彼女が出ていってからも、それは何一つ変わってない。
「あっ、ごめん…でも、もう遅いしね。」
俺の沈黙で察したのか、彼女は慌てて訂正した。
桃花達を家に送ってから、マンションに帰ってきた。携帯が鳴る。桃花からのメールだ。受信箱を見ると、桃花からのメールでいっぱいだ。このままいくと…、昔の洋子からのメールは消えていってしまう。
心もこんなものなんだろうか?桃花の存在は俺にとって少しずつ、だが確実に大きくなっていた。
「私ね、風俗嬢だし、子供もいるし、あなたから見れば、まだ子供だけど…。」
何度目かのデートの帰り、長い前置きの後、桃花は言った。