恋におちるときU-3
カッ、カッ、カッ―…!
廊下というのは見事にヒールの音が響く。
小走りすると少しうるさい。
「今回のチカさんの写真見たー?!人物画が一枚だけあったんだってー!」
そんな話を小耳に挟んだ私はこうして長い廊下を急いでいるのだ。
先輩の風景写真のファンは多い。
それが今回、初めて人物写真が展示されたというのだから、なかなかの人だかりだった。
人をかき分けた先に私の鼓動は高鳴った。
【大切な君へ】
そう題名が付けられた写真は見事なものだった。
写真の中の人物は、触れたら壊れてしまいそうだ。
写真は、撮った人の気持ちがあらわれる。
チカ先輩の写真独特の儚さ。チカ先輩はいつもこんな風に見ているんだ。
程良い逆光と、風に揺れるカーテン、髪をかきあげながら微笑む…………私。
チカ先輩から見た私。
私が恋をした瞬間の表情だった。
END