恋におちるときU-2
昔飼ってた猫に雰囲気が似てる、とかいうヘンテコな理由で私はミィと呼ばれるようになった。
だけど私はこの名前が気に入ってる。
今ではみんなが"ミィ"と呼ぶ。
チカ先輩も「俺がつけた名前だ」と得意気に呼ぶ。
本名を呼ばれる教室より、ずっと居心地の良い場所。
『ミィさんとチカさんは付き合ってるんですか?』
この前、今年入ってきた後輩にそう聞かれた。
チカ先輩は私にとってお兄ちゃんで、私はチカ先輩にとって妹だ。
……いや、もしかしたら猫扱いなのかもしれないが。
お互い、居心地の良い存在であるのは確かだ。
「ミィ」
「ん?」
カシャ―…!
振り向くと同時にきられたシャッターに、私は思わず声を上げる。
「やだぁー!!今撮ったのッ?!」
「ばっちり」
「最悪〜!すっごい間抜けな顔してた!!」
「ははっ」
「人は撮らないんじゃなかったの?」
「まぁな」
チカ先輩は笑うと少し目が細くなって、優しい顔になる。
チカ先輩の片耳のピアスが小さく光ってまぶしい。
「チカ先輩の写真って綺麗だよね」
「そっか?」
「うん」
空、校舎、街角、植物……チカ先輩の写真は綺麗で、どこか儚げ。
その写真に私は惹かれたのだ。
「先輩、今度の学祭の展示会どうするの?」
「ん〜、どうすっかな〜?」
チカ先輩はカメラを構えながら窓の外を眺めていた。