ツバメK-5
「おはよ」
『おはよ』
あたしはいつものように千川くんに挨拶して、お茶汲みを始める。
さすがにもうすっかり手慣れたものだ。
なのに今日は違った。
カシャン、と強い音を立てて湯飲みが割れた。
というかあたしが落として割った。
『……』
だって目の前には
“あのバカ”が立ってたんだから。
「……おはようございます」“あのバカ”、ぬけぬけと挨拶してきやがった。
『……』
すると、給湯室の奥にある扉から部長が姿を現した。
「おお、綾瀬くん」
『お、おはようございます、部長』
「ああ、驚いたかい?彼は今日からうちの部署で働いてもらうことになった鳥羽くんだよ」
「鳥羽燕です、よろしくお願いします」
『……よろしく、綾瀬です』
なぜかひどく冷静な自分がいた。
燕は今日から新入社員で、同じ部署の後輩なのだ。
って……
冷静でいられるかああああああああ!!!!!!
あたし、綾瀬椿芽はただ今、猛烈に憤りを感じております。
楽天的で自由奔放な“このバカ”だけど、まさかそこまでやるとは思わなかった。
でも、楽しくなりそう。
あたしも燕も、もっと幸せになれそう。
窓の外を見ると、二羽のツバメが仲良さそうに飛んでいました。
ずっとずっと、仲良さそうに舞っていました。
終