ツバメK-3
「……全部って?」
『……あんたのこと』
「……」
『あんたが桜実くんに話したこと全部』
「……あいつ」
桜実はいつも、そういうお節介をやく。
いつもならウザイけど、まあ今回は、桜実グッジョブ。
何にしても、今なら言える。
というか、今しか言えない。
「椿芽……」
『……なに?』
「今まで悪かった。本当にごめん」
足元にある水溜まりを見つめながら言う。顔なんて見れないから。
『……ばか』
「……」
少しの沈黙のあと、椿芽はくすりと自嘲気味に笑って言った。
『……あたしもね、本当ばかだった』
「……」
『ごめん』
「……っ」
やばい、泣きそうだ。
『なに……泣いてるのよ』
「ふぇっ?」
慌てて目を擦る。
本当に俺は泣いていたみたいだ。
めちゃめちゃ恥ずかしい。
「……汗だから」
『……汗ね、汗』
椿芽もぐすっと鼻を鳴らして目を擦った。
「……椿芽」
『なに?』
「……愛してる」
やっと言えた。
今まで、全く言わなかった本当の気持ち。
「……なんかリアクションないの?」
『……』
椿芽はうつむいている。
また泣きだしたのか?
やった!椿芽の弱みを握れたぜ!
『……ング代』
「はい?」
か細い声で椿芽は何か言った。
がばっと顔をあげる椿芽。
『クリーニング代!よこしなさい!』
「……」
『この服高かったのにドロドロにしちゃって!!』
「……」
ごめんなさい、椿芽。
我慢できないっす。
『ひゃっ』
俺は椿芽を強く抱き締めた。
びちょ、という感触も気にせずに、ギュッと。