『ロマナスの末裔』-1
「お父さん、起きてよ」
「……ン…」
「お父さん!」
夕食の後、テレビを見ていた辰馬慎吾は、ついウトウトとしてしまいリビングで眠ってしまったようだ。娘の麻美はそれを見つけると口やかましく起こしていた。
「う…うん」
慎吾は身体を大の字にして伸びをしてからゆっくりと半身を起こす。
「そんな所に寝てたら風邪ひくよ。お風呂に入って寝れば?」
「スマン。つい、寝ちゃったな…後かたずけは?」
寝ぼけ眼で髪を手櫛で撫でつけながら慎吾は麻美に聞いた。
「とっくに終わっちゃった」
麻美はダイニング・テーブルでかたずけ後のお茶を飲んでいる。慎吾はゆっくりと立ち上がると〈じゃあ、風呂に入って寝るかな…〉と言うとリビングを後にした。
「ふぅ〜っ」
気持ち良さそうな声をあげ、湯船に浸かる慎吾。すると麻美の声が脱衣所から響いた。
「お父さん」
「何だ」
「私も一緒に入っちゃおっかな」
言うが早いか、ガラス戸が開き裸にの麻美がバス・ルームに入って来た。
肩まで垂らした髪。太い眉に大きな瞳。その顔立ちには、まだ幼さが残っていた。
褐色の肌。張り出した乳房。くびれを強調するように発達した腰肉。股間には濃い若草が繁っている。顔立ちと違い、その身体は〈女〉そのものだった。
はち切れんばかりの若い肢体を麻美は恥じらう事無く慎吾の面前に晒していた。
「麻美。前ぐらい隠して来なさい」
慎吾は麻美を軽くたしなめる。
「エッ?私、お父さんとなら恥ずかしく無いよ」
「お父さんと一緒だからじゃなくて、普段からのエチケットだよ」
「はい、はい」
麻美は慎吾のとなりで身体を洗いだした。
スポンジで立てた泡を身体に撫で付ける。反らせた首筋から胸元へとスポンジを滑らせる。乳房から腹部。そして股間へと。
「ふぅ…ん…」
時折息が漏れる。
全身を洗い終えた麻美はシャワーで身体の泡を落とすと、続けて髪と顔を洗いだした。
「ふぅっ」
全身を洗い終えた麻美は、水の滴る髪を後にまとめて軽く絞ると湯船に浸かる慎吾に声をかける。