『ロマナスの末裔』-6
にゅぷ、ずぷ、くちゅ、くちゅ
「あっ、あっ、あんっ、あぁ…」
麻美は半身を起こし、なまめかしい表情で指の動きを目で追った。頭の中はある男性と交わっている妄想に支配されていた。
慎吾と…父親との交わりだった。
「あぁ…お父さん、お父さん…」
哭くような声を上げる麻美。指の動きは速さを増し、粘った液は尻まで濡らしていた。
「ああぁ…くっ!ん…ん…」
麻美は全身を震わせて反り返り、しばらく動かなかった。悦びに溺れる。しかし、次の瞬間、彼女は脱力してベッドに沈み込んだ。粗い息だけが部屋に響いていた。
ー夕方ー
「辰馬さん。娘さんから電話です」
「麻美から?」
キーボードを叩く慎吾に怪訝な表情が浮かぶ。麻美は自分への電話などめったにしないからだ。
慎吾は自分のデスクに廻された電話を取ると、麻美の苦しそうな息使いが受話器越しに聞こえた。
「どうしたんだ?」
「お父さんゴメン…風邪…ひいたみたいで…」
「大丈夫なのか?病院は?」
「うん…行った。風邪だって…注射されて…ただ、熱が出て…」
「じゃあ寝てなさい。私もすぐに帰るから」
「分かった…私、食欲無いから…ごはん要らないから…」
麻美はそれだけ言うと電話を切った。途端に上司から慎吾に声がかかる。
「辰馬君。今日は帰っていいよ」
「しかし部長…」
「いいから。後はやっとくから帰ってやりなさい」
「そうですよ」
今度は部下から声がかかった。
「辰馬さん、娘さんの事になると仕事が手につかないじゃないですか。僕がやっときますから」
慎吾は皆んなに頭を下げると、会社を後にした。
「麻美!」
自宅に着いた慎吾は開口一番、娘の名を呼んだ。しかし、玄関の外灯は灯っていたが家の中はすべての照明が消えていた。
慎吾は手探りで明かりをつけながら部屋に入って行った。
二階に上がり、麻美の部屋に行くと部活のユニフォームのままベッドに横たわる娘の姿を慎吾は見つけた。
「あっ…おかえり…」
麻美は慎吾の姿に目を覚ますと、苦しそうな息使いで答えた。