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『異邦人』
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『異邦人』-25

「酷い親だと思っているのでしょうね……。けれど、あの娘にとってこれは越えなければならない試練……。何故なら、たった一人で異世界で暮らしていくのは、生半可な思いでは出来ないのですから。」
複雑な面持ちを思わせるレオナの表情。娘を誇らしげに思いながら、どこか淋しげな笑みを称えていた。

「私は娘を誇りに思います。そして光さん、貴方が思っていた通りの人でよかった。ルーンを、娘をよろしくお願いします。」

レオナの話はそこで終わり、再び目の前が暗くなっていく。光が目を開けると軽く頬を赤らめて、こちらを見つめるルーンの顔があった。
「無茶苦茶だぜ!んなコト突然言われたって……」
呆気にとられた光が我に返り最初に口にしたのは、その一言だった。
思わずピクンと光の片眉が上がる。それを見て、一瞬驚いた顔をしたルーンだったが、やがてニンマリとした笑顔へと変わり光の腕にギュッと抱きついた。
「なに笑ってんだよ?わかってんのか?大学だってあるし、バイトだって……いつも一緒にいられる訳じゃないんだぜ?」
なかば呆れ顔で言う光だがルーンは満面の笑みで見つめている。その裏には光にも言えないルーンだけの秘密があった。

『あのね、ルーンちゃん……いいコト教えてあげる。』

それはルーンの心の中、去り行く美幸が残した言葉だった。
『光はね、嘘ついたり照れたりすると片方の眉が上がるの……覚えておくといいわ。貴方にしてあげられるのは、これくらいしかないけど光の事、よろしくね。そして幸せになってね……。それと、わかってると思うけど光には言っちゃダメよ?じゃあね……』
(うん!美幸さん、絶対言わないよ……ありがとう……)

「ったく…負けたよ。」
笑顔のまま、何も言わないルーンに根負けしたのか、ふぅっと溜息をついて光は苦笑いをした。そうしながらも、ふと心の中で光は首を傾げる。
(ちょっと脅かすつもりで言ったんだけど、全然効果無しなんだよなぁ……まるで美幸と話してるみたいだ……なんでだろう?)
本当の理由を光は知るよしもない。傍らに寄り添うルーンの頭を優しく撫でながら苦笑いは、やがて笑顔へと変わっていった。
(退屈な毎日とは、おサラバって訳か……なぁ、これでいいんだよな?美幸……)

そんな光の問掛けに答える様に、どこからともなく吹き抜けた風が、優しく光の前髪を揺らしていった。

まるで、そっと頭を撫でる様に……


END


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