僕らの日々は。〜ゲームな休日〜-1
「なぁ……一葉」
「何?」
とある休日。
「一つ質問があるんだけど」
「何よ?」
沖田家、春風の部屋。
「せっかく遊びに来たのに、やるのが一人用のRPGってどうなんだろう……」
「いいじゃない。私は楽しいと思うけど?」
先程家に遊びに来た一葉は僕の部屋に上がるなりゲームをしていた。
……一人用の。
「うん、まぁ確かに一葉は楽しいと思うよ…」
「そう?私RPGとかやってるの隣で見てるの結構好きなんだけど」
「そりゃ僕も嫌いじゃないけどさ……」
僕の部屋なのに、とかまぁそういうのはいい。
けど一葉、一時間ぐらいレベル上げしかしてないじゃないか。
……はっきり言って、見ててつまらない。
…とか思ってたら一葉が話しかけてきた。
「にしてもさ、変だと思わない?」
「何がさ?」
「ほら、こういうゲームで薬草ってあるじゃない?」
「まぁ定番だしね」
回復アイテムの王道と言えば薬草かポーションだろう。稀にグミを使うゲームもあるが。
「だってさ、考えてもみなさいよ?残りHP1とかの瀕死の重体なのに、いくら体に良いって言っても草を何枚か食べただけで全回復なんておかしくない?」
「そう言われれば確かにそうだけど…」
「それに瀕死ってことは絶対骨折の一つや二つしてるわよね…。葉っぱ食べたくらいで治るのかしら?謎よねぇ」
「まぁその前に僕なら瀕死の状態なのに仲間に葉っぱを渡されて『食え』って言われたら確実に泣きたくなるな……」
むしろその精神的ダメージがトドメの一撃になるんじゃないだろうか。
「あ、それと前から気になってたんだけどさ、この
『かわのたて』とか『かわのよろい』の『かわ』って何の皮なのかしら?」
「またどうでもいい事を…」
思わず脱力する。
「…やっぱ値段的にも安いし、鳥皮かしら?」
「待て待て。『鳥皮の鎧』って何だよ。全身コレステロールで完全武装じゃないか」
「あら、鳥皮は茹でたら以外とヘルシーなのよ?」
「いや鳥皮の栄養バランスはどうでもいいよ…。でも確実に防御力0だよソレ」
「じゃあ『皮の剣』は?」
「それはもう剣とは言わない。焼鳥の鳥皮串だ。
そもそも『かわのつるぎ』なんて無いし」
何が悲しくて全身ブヨブヨの脂で覆わなきゃいけないのか。そんな勇者は嫌だ。
「だいたい『皮』じゃなくて『革』だと思うけど。牛革とかの」
「革ねぇ……。ワニ革とかかしら?」
「またえらく高級品だな」
「なんかワニ革とかヘビ革って“高級ブランド”って感じするわよね」
頭の中に
『ルイ・ヴィ〇ン春の新作!今が旬“ワニ革の鎧”』
…という文字が浮かんだ。
……うん。絶対売れない。