君の羽根が軽すぎて―ソウヤ編―-4
「リコ…何を…っ」
言い掛けて、止めた。
僕は素早く立ち上がり、リコの元へと向かう。
「…ふ、服は?」
一、二、三秒間経ってもリコは答えない。
夏服じゃなかったら…なんて躊躇してる暇さえないらしい。
上着を脱ぎ、それをリコに着せてやった。リコにとっては相当大きいサイズだから、ちょうど下も隠れている。
「靴は…いや…走り辛くなるけど…」
靴を脱いで、リコに履かせた。
…やはり、華奢な小さい足にはアンバランスだ。
「…じゃ、行こう」
リコの手を掴み、公園を出た。
その後は…もちろん決まっている。
もう一度リコの手を握り直してから、走った。
季節は夏。即ち学校での僕らの姿は夏服となる。
今現在、僕の制服はリコが着ている。
つまり僕は上半身に何も着ていないのだ。
だから周りの人達がどんな目で僕達を見ているのか、大凡の察しはつく。
…それでも僕は、無我夢中で走り続けた。
◇
どうか 在らせてください
どうか 知らせてください
どうか 枯らせてください
種を 与えてください
水を 与えてください
愛を 与えてください
脳から 効かせてあげましょう
歌から 聴かせてあげましょう
哀から キかせてあげましょう
わたしは 人
わたしは 星
わたしは 蒼
◆
バタンとドアが閉まり、そこから現れた私服姿のリコが僕の目の前で座る。
そして俯き、手に持っていた服を無言で僕に押しつけてきた。
「え…え?これ…」
「………」
リコは一度だけ顔を上げて僕を黙視したが、またすぐに俯いてしまった。
なるほど。その赤らめた表情から推測すると、この服を着ろということか。
新品並みに綺麗な白い半袖。ありがたいんだけど…。
「…ちょっと…大きい、かな…」
明らかに大人サイズの服だ。ぶかぶかって訳じゃない。でも……。
「もしかして…服買う時に失敗した…とか?」
「う……」
…図星ですか。
いやいや、一応は結果オーライだから、文句は言えない。
下が制服なのに上が白半袖って…センスが悪いとか言われそうな格好だ。
────で、
「……」
「………」
今更になって、かける言葉が見つからないのはなぜだろう。
こういう気まずい雰囲気は好きじゃない。
考えるのは後にして、とりあえず話しかけよう。そう思って行動した時
「あの」
「あのっ!」
見事に声が同調した。微妙にリコの方が語気が強い。