君の羽根が軽すぎて―ソウヤ編―-3
きっと僕は、後悔していた。
眠りにつく前に、少しだけリコのことを思い出した。
そういや三年生なんだな…未だに信じられないや。
小さくて幼くて、あんなにかわいいのに。
時々大人びた顔を見せてくれるリコも、僕にとってはかわいいリコなんだ。
…いつからかな…。
横になり目を瞑ると、微かに脳内でリコの歌が再生された。
それが子守歌の代わりとなって、ぐっすりと眠れた。
…そのせいで遅刻してしまった。
起きたのは、8時30分頃。
家を飛び出したのは、7分後。
あまりの出来事に急ブレーキをしてしまうのは、これから。
登校ルートをひたすら全力で走る僕。
今にも両足が絡み合って、思いっきり転けてしまいそうな感じで走っている。
あー…いや、さっき一回転んだけど。
とりあえず急いでいるんだ。
安眠効果効きすぎだよ、リコ…!と心の中で叫んでいたら、また転んだ。
頭を掻きながら立った直後、僕は不思議な光景を目の当たりにする。
「…え…」
前言撤回。安眠効果だけではないんじゃないか…。
視界に映る世界は、ただの公園。ただの、学校の近くの公園。
登・下校する際には必ず視界に映る公園。
やや広くて、滑り台とかブランコとかの遊戯道具があって、真ん中には噴水が置いてある公園。
…そんなことはどうでもよくて。
なによりも僕の瞳に映った人物が不思議だった。
たしかに、公園内に人はいない。
だけど、公園外にはたくさん人がいる。
それを踏まえた上で…
生まれたままの姿で、噴水場の雫を飛び散らせながら水浴びする少女。
その姿は無邪気で、色っぽい。見た瞬間そう感じ取れてしまった。
だって仕方ない。適切な表現が他に見つからなかったんだ。
…違う、問題は…。
「…!」
少女は僕を見て、硬直した。
「…………」
沈黙というものは、アクションを起こさない限り、破られない。
だから、破ってやった。