舞子 〜私の名前〜-1
見透かされている。
全て。
涙がこぼれた。
隆史を傷付けている。
見透かされている。
私の気持ち。
涙が止まらない。
隆史を傷つけた。
荒々しく鞄を拾い上げると、隆史は「ごめん」と一言言って、私に背を向けた。
何て言ったらいい?
「ごめんなさい」って?
違う。
だって違わない。
だって、全て隆史の言う通り。
おかしいでしょ?姉弟なのに。
おかしいでしょ?12年も一緒に暮らしてるのに。
おかしいでしょ?ホントの姉弟じゃないからって…
―愛しているなんて―
セイへの想いを忘れるために、隆史を利用した。
隆史を好きだと思い込もうとした。
最低な私。
隆史を傷つけた。
だんだん遠くなる隆史の背中。
涙でぼやけて見えなくなる。
追うことはできない。
隆史の言ったこと
全て真実だから――
家に着いたのは、だいぶ遅くなってた。
泣き顔を見せたら両親が心配するから。
冷たい夜風が、涙でカピカピになった頬を優しく撫でる。