SLOW START-1
「絶対やばいよね…」
高校を卒業して4年がたってしまった。
あたし、成田晶(あきら)は23回目の誕生日を迎えた、と共に彼氏いない歴も23回目を更新してしまった。
まぁ処女だよね…
「別にいいんじゃない?人それぞれだし」
親友の加藤さくら。小学1年から高校終了まで同じクラスで卒業後はお互い就職した。
あたしとは全てが正反対で今は彼氏と同棲中だ。
あたしの誕生日に久々に会い、二人で飲むことになったのだ。
「さくらには解らないよ〜この焦り…」
大好きなタコわさを突つきながらため息をついた。
さくらは中1の時に初めて彼氏が出来た。
それからは一定のスタンスで出来て別れてを繰り返していた。
まぁ可愛い、けどぶりっ子でもない。一言でいえば可愛いおっさん…?みたいな…感じだな。
あたしはというと、初めて好きになった人には告白する前に振られ、その後は振られるのが怖くて好きになっても告白なんて出来なかった。
好きな人の前に出ると何故だか笑いに走ってしまう。いい人を演じてしまう。
今に至っては好きな人さえいない。
前はさくらに対して羨ましい、悔しい気持ちもあったけど最近ではそれすら起こらない。
「だって23歳で処女だよ?!彼氏がいたことすらないんだよ?!」
ビールの残りを一気に飲み干した。
「声でかいよ。処女って丸聞こえ。」
ハッとして周りを見ると会社帰りのサラリーマンやバイト風の店員がちらちら見ていた。
「…もういいよ。はぁ〜誰かいないかなぁ〜もらってくれないかなぁ〜処女」
どうしようもなく投げやりになってしまった。
「ふ〜ん。誰でもいいの?初めての相手」
さくらがちょっと怒ったのがわかった。
「誰でもって訳じゃないけど…」
「晶さぁそんな投げやりになってると後悔するよ。」
さくらの言うこともわかる。ただこのままじゃ…
「仕方ないなぁ。誰か紹介してあげるよ。」
あたしはパッと顔を上げた。
これまで、さくらは紹介してくれた事がなかった。
人に紹介されて義務的に付き合うより、自分で好きになった人と自分の力で付き合った方が幸せになれるという理由らしい。