ぴったんこラブラブ-1
出身地。
僕→北海道。
彼女→沖縄。
血液型。
僕→A。
彼女→B。
座右の銘。
僕→初志貫徹。
彼女→臨機応変。
挙げればきりがないですが。
つまり、気が合わないのです、僕ら。
〜ぴったんこラブラブ〜
長い梅雨も明け、久しぶりの快晴。
教室の窓から差し込む光に目を細め、僕、椎柴哲太(シイシバテッタ)は呟く。
「こんな空気の綺麗な日には…」
「家でゴロゴロが1番だよね」
公園にでも出掛けてひなたぼっこが1番、という続きを飲み込む。
「っていうか、基本的にゴロゴロしてんのが1番だよね」
僕の彼女、浅見いちこ(アサミイチコ)はあくび混じりにそう言った。
いつものことながら、本当に僕らは…
「気が合わないね」
「何が?」
「何から何まで。食べ物の趣味も、いちこはイタリアン好きで俺は和食好きだし、映画の趣味も、いちこはホラーで俺はドキュメンタリー」
「ああ、確かに合わないよね」
「むしろ、正反対だよ」
僕が不満を訴えると、彼女は面倒そうに眉をしかめた。
「いいじゃん、正反対。磁石だってS極とN極が引かれ合うし、オウトツだって凸と凹がはまるんだから」
「俺らは磁石でもオウトツでもないよ」
「人間だってそうだよ。サドとマゾが…」
僕は慌ててその危険な唇を覆った。
彼女の自由な行動には慣れつつあるけれど、公共の場で下ネタを言うのは勘弁してほしい。
「離せ、どエム」
抓られた手の甲が、紅くなってしまった。
どエスめ…。
「大丈夫だよ。ちゃんと、同じところもあるし」
彼女が携帯電話を弄りながら言う。
同じところ?
‘学年’くらいしか思い付かない。
「哲太の1番大切なものって何?」
「1番大切…」
…キミ。
すぐに思い浮かんだけれど、さすがに恥ずかしくて口には出せない。
彼女は僕を一瞥し、全てを見通しているかのような笑みを投げた。
…あれ?
ちょっと待て。
今は、僕らの‘同じところ’についての話をしていたはずだ。
ということは、つまり、いちこの‘1番大切なもの’って…。
「自意識過剰」
にやけていると、彼女の冷ややかな言葉が振り掛けられた。
やっぱり、どエスだ…。
そんな彼女をこんなに好きなのだから、言われた通り、僕はどエムなのだろうか。
それは、少し困る。
「哲太って、ほんとウケる」
いちこが笑いを漏らす。
幸せそうな横顔。
「…まぁ、いいか」
僕はひなたぼっこ日和な窓の外を眺め、放課後は彼女と家でゴロゴロしよう、と思った。