ずっと、たいせつ-4
駄菓子屋を出て暫く歩くと、彼女はまた
「あのさ、もうひとつだけ、寄りたい所があるんだけど…… 」
と、口を開いた。
流石に遠慮がちなのは数回目と判っての事なのだろうが、俺は
「別に、いいぜ?」
と難なく応えてみせる。
「ごめん、次で最後だから」
「別に構わないって。 ただ、その前に髪型くらいは直させろよ?」
「……?」
首を傾げながら彼女が、立ち止まり俺を見上げる。
俺はそのまま…… 顔を近付け、そっと囁く。
「お前の『ずっとたいせつ』が、くたびれてちゃしょうがないだろ?」
「フフッ……ばか」
微かに微笑みながら瞳を閉じた彼女に、そっと短いキスを。
二人の頬を、夜風が冷ましながら吹き抜けていく。
祭囃は遠く、一つに重なった影を、
月明かりが静かに蒼く伸ばしていた。
おしまい
それでは皆さん、よい週末を。