座敷わらしと階段と……-2
「ここだよ〜!」
目一杯叫んだんだけど、お父さんは聞こえないみたい。
そこでやっと気付いたんだけど、僕階段に倒れてるんだよね。でも、僕は空に浮かんでる。
なんか、僕が二人いたんだよ。
よく判らないけど、怖くなって大声で泣いたんだ。でもこんなに泣いてるのに、涙は少しも出なくて、それが怖くてまた泣いてたんだ。
そしたらさ、階段の一番下に、僕より年下に見える男の子が立ってたんだ。
七五三のときみたいな服を着てて、昔の人が使ってたボールみたいなのを持ってた。
それでその子が、
「早く戻った方が良いよ。戻れなくなるから」
って言うんだ。
「あそこに倒れてる僕の中に入れば良いの?」
「うん。急がないとダメだよ。」
そう言ってあの子は消えちゃった。
僕はあの子の言葉を信じるしかなくて、必死に戻ろうとしたよ。
水泳は苦手なんだけど、手足を思いきり振り回して進もうとしたんだ。
だけどこんなに力一杯進もうとしてるのに、全然前に進まなくて、本当に怖かった。
ずっとそうやってて、やっと倒れてる僕の頭に手が届いたら、辺りが真っ暗になって……その後は覚えてないや。
変な話でしょ?
お父さんとお母さんに話したら、座敷わらしかもしれないね。って言うんだけど、座敷わらしって何なの?
う〜ん。やっぱり判んないや。あの子誰だったんだろう。
あ、そういえばもう一つだけ判らないことがあるんだよね。
僕が窓からお母さんに手を振ってるとき、なんでユウイチ君は僕の背中を思いきり押したんだろ?