舞子 〜想い〜-3
「フロ入ろ…」
静かな部屋に、俺の声だけが響いた。
リビングで1人、テレビの前のソファを陣取って、カップラーメンをすする。
浅く腰かけたソファ。
目の前のテーブルに置いた携帯。
窓の外。
壁の時計を睨む。
テレビでは何かのバラエティ番組が、ただ流れてる。
舞子が帰って来ない。
時計の針はそろそろ10時を指す。
窓の外は真っ暗。
おかしい…いつも隆史と会ってても、夜9時までには帰るのに…
(まさか何かあったんじゃ…)
時計の秒針の音がやけに響く。いや、これは俺の心臓の音か?
カップラーメンをテーブルに置き、箸を投げた。
(探しに行こう…!)
あわてて立ち上がった瞬間――
「ただいま」
舞子の声――
ホッとしてソファに崩れ落ちる。
(よかった…)
カチャ…と、舞子がリビングのドアノブに手をかけた音がした。
待てよ…今夜、どうせあの両親は帰って来ないだろう。
と…いうコトは今夜は舞子と2人きり!?
(…ダメだーっ!!俺のバカ!!何で今日みたいな日に早く帰って来たんだーっ!!)
カチャリ…
ドアが開いて舞子が入って来る。
とっさにソファにダイブした。
とにかくダメだ。
2人きりはダメだ。
とても抑えられない。
とにかくダメだ。
気持ちが、溢れてしまう――
「あれ…?おかあさん…いないのか」
舞子の声。
どうやら書き置きを読んだらしい。
「あ…セイちゃん…寝てるの?」
舞子が俺に気付いた。
そうだ。俺は寝てるんだ。
このまま寝てしまえばいい。
寝てしまえ。
俺は、必死で目を閉じた。