舞子 〜仮説と本音〜-2
「だぁーっっ!!」
頭の中のもやもやしたモノを振り払うべく、俺は勢いよく起き上がる。
考えてたって埒があかん!!
話し合うんだ、舞子と。
ぶつけるんだ、俺の気持ちを。
舞子を…好きだという気持ちを。
(俺の心は決まった!行動あるのみだ!!)
跳び跳ねるように立ち上がり、俺は足元に投げた携帯を探す。
(あれ…確かこの辺りに…)
見当たらない…
芝生の上を四ん這いになって探す。
ちょっと必死。
(おいっ!俺の心を初っぱなから折るようなマネをするなぁっ!!)
携帯に向けてキレる。
沈黙を続ける携帯。
(どこだーっっ!)
〜♪ ♪ ♪〜
4回目のこの着信音。
助けてくれるのは、いつも舞子。
音のする所に、確かにあった俺の携帯。
(こんな所に…)
「もしもしっ」
今度は躊躇いなく出る。
少し声が裏返ってないか?俺…。
「隆史っ」
走ってくる舞子。
栗色の髪を左右に揺らし、息を切らせて。
辺りは薄暗くなってて、少しひんやりした空気が漂う。
頬をピンク色に染めた舞子が近付くと、彼女の香りがして、抱き締めたい衝動に駆られた。
「舞子…」
立ち上がって近付くと、舞子は満面の笑みを浮かべて俺を見上げた。
その笑顔にぐっとくる。
今すぐ、今すぐ抱き締めたい。
俺は欲望のままに抱き締めようと、した。
「連絡とれないから心配したよ。セイちゃんに電話して聞いても、隆史午後の授業出てないって言うし…」
微笑む舞子。
俺の手は、抱き締めようとしたカタチのまま、宙に浮いて、止まった。
「あー、疲れた。休んでいい? あ、そうだ、コレ」
舞子から差し出されたコーラ。
そして、舞子の左手には、いつものコーヒー…
俺の中で、何かが、
何かが――
「俺のコト、バカにしてんのか?」
声が震える。
違うだろ。こんなことが言いたいんじゃない。
俺は、舞子に自分の今の不安な気持ちを――でも舞子のことが一番好きだというコトを伝えたいんだ。
こんなことが言いたいんじゃないんだ。
「何でいつも飲めもしないブラックのコーヒー飲んでんだ?」
キョトンとした表情の舞子。
その舞子の周りの緑の木々たちが色を失っていく。