結界対者・第二章-3
「なぁ、間宮。スカート……」
「へ?」
目を丸くして振り返り、両手で言われた部分を探る。
そして、スカートが捲れている事に気が付いた刹那に
「いゃあああああああっ!」
と叫び声をあげ
「なんでっ! どうしてっ! いつからっ!」
と顔を瞳と同じ位の赤さになるまで紅潮させながら喚いた。
「知らねーよ」
本当は、家から此処までだろ? と親切に答えてやりたいところだが、あまりにも酷く混乱している様なので止めておく。
しかし、そんなこちらとは無関係に
「たたた多分、家からだっ! アタシったら……」
と、赤々としたままの顔を歪めると、そのままブレザーの胸のポケットから例の銀時計を取り出して、頭上にそれをかざした。
「お、おい! 何をする気だよ!」
「うるさい!うるさい!うるさいっ! 時間を戻すのっ! 家を出た時まで時間を戻すのっ! 刻…… 」
転、と続ける前に、その手を掴み
「やめろって! さっき自分で言ったじゃないかっ! 結界を護る以外に力は使うなって!」
「非常事態なのっ!邪魔しないでっ!」
手をほどこうと、じたばたと暴れる間宮。
まったく、なんてこった……
朝っぱらから、この間宮と痴話喧嘩同然のシチュエーションに突入するとは。
しかも収集をつけるのは困難…… だな、これは。
「間宮、落ち着け! 誰もが見ている様で、実は誰も見ていない!世の中なんてのは、そんなもんだっ!」
「嫌だっ! 時間を戻すのっ!」
必死にたしなめる俺と、一般的には常識外れの間宮の反論に、周囲からクスクスと笑い声が聴こえてくる。
まったく、俺の方が100万倍恥ずかしいぜ!
「このバカっ! いい加減に……」
声を張り上げようとした、その瞬間!
間宮の動きがピタリと止まった。
「……間宮?」
その、見下ろした表情からは、つい先程迄の赤色はすっかり消えていて、視線は鋭く俺の向こう側…… つまり俺の背後を睨んでいる。
な、今度は何だっ?
振り返り、間宮の視線の彼方を追う。
すると、そこには、こちらに向かって歩いて来る、俺と同じ制服を着た、見覚えのある三人の男の姿があった。