結界対者・第二章-2
アパートから学校迄は歩いて15分程、アパートの前の路地に出て、そこを大通りに向かって歩き、それを反対側へ渡って暫く進んだ所が俺の通う高校だ。
昨日は、その大通りと重なる場所で、間宮と別れた。
大通りを市街の方へ、少々の疲れを背中に見せながらも、しっかりとした足取りで去って行った間宮。
あいつ、背中越しに手を振りながら消えていったっけ……
そんな事を思い出しながら、俺は通う道を重くもなく軽くもない足取りで進む。
アパートの前から、やがて大通りへ差し掛かる場所へ……
角に立つ、たばこ屋を右に見ながら、大通りに沿う歩道に足を架けると、そこには何故か……
間宮が待っていた!
歩道と車道を仕切る手摺の様なガードレールに腰を載せて、腕組をする紺色のブレザーに赤いチェックのスカートの制服。
傾げたセミロングの髪型にトレードーマークとも言うべき赤い瞳が、こちらに向けて光を放っている。
その独特の存在感は、間違いなく間宮だ。
「おまえ、なにやってんだ?」
驚いて、思わず言葉を漏らして
「ていうか、なんで此処に居るんだ?」
と言い直す。
すると間宮は、吹き捨てる様に鼻を「フン」と短く鳴らすと
「別に好きで此処に居る訳じゃないわよ」
と口を尖らせた。
「はあ?」
「アンタがまた、昨日の三馬鹿の時みたいに力を暴走させたら困るから、この私が見張ってなくちゃいけないって事! まったく、言われたコッチが迷惑だわよ……」
「言われた? 誰に?」
「ん? お姉ちゃん…… って、そんな事はどうでもいいのっ! さっさと学校に行くわよっ!」
付いて来い、と言わんばかりに歩き出そうとして、ガードレールから離れる。
しかし、思い出した様に
「そうだ、昨日帰りに言った事、覚えてるわよね?」
と言葉を投げた。
「昨日?」
「力は、結界を護る時以外は絶対に使っちゃダメっ! アンタと三馬鹿の時のアレは、非常事態だから使ったけど。 普段は絶対ダメなんだからね、わかった?」
返事をするまでもなく、そりゃそうだろうと普通に思う。
個人の都合で、勝手に風を起こされたり、時間を停めたり戻されたりしては、世の中の皆さんはたまったモノではない。
「ああ、わかってるよ」
「なら、いいけどさ」
一瞬、納得の笑みを見せながら、軽やかに背中を向けて先程のままに歩き出す。
しかし、その向けた背後の様子を見た瞬間、俺は思わず息を飲んだ。
あ、スカート……
間宮が、その肩から斜めに提げた鞄の内側に、スカートの裾が引っ掛かって、随分と際どい所まで捲れ上がっている。
教えてやったほうがいい…… よな?
もの凄く言いづらいが仕方がない、これ以上「その手の趣向」の皆さんが手を叩いて喜びそうな格好で、このまま間宮を歩かせておくのは忍びないと思う。