結界対者・第二章-18
「そろそろ…… ね」
背中で囁く声…… と、その時、それ迄きつく背中から肩に回されていた両腕が緩み、するりと外れた!
「ま…… 間宮?」
「先に降りて、後で私を受け止めるのよ?」
背中を軽く押される。
「お…… おいっ!」
俺は、そこが空中である事すら忘れて思わず振り返る。
するとそこには、宙に体を游がせ、両腕で銃を構える間宮の姿が在った。
「間宮……」
引金が、数回引かれ、銃身の尖端から幾度もの光が放たれる。
そしてそれら全ては、堕ちかける二人に上昇しながら向かい来る、四体の忌者に尽く命中し……
俺は……
その光景を視界に映しながら、地表へと墜ちていった。
―8―
我ながら、とんでもない事をしたものだと思う。
それは成功率不明の、間宮がとっさに思い付いた作戦……
しかし、それを信じて実行する以外に、手だてはなかった。
数分前…… いや数十秒前かもしれない、俺達は上空に居た。
そして今は……
忌者に崩された大地に座りこみ、ただ互いに呆然と顔を見合わせる。
あの時、俺は夢中で風を呼んだ。
二人が堕ちゆく先に救いの逆風を、ただただ一心に、願いの全てを込めて。
それは、相当な荒々しさを伴ったものの無事に二人を受け止め…… 今、この時に至る。
「助かった…… 」
最初に口を開いたのは俺。
安堵の吐息とともに、漏れた言葉がフワリと宙に舞う。
間宮は、こちらに合わない焦点と無表情を向け、黙ったままで姿勢を崩さない。
「間宮、大丈夫か?」
声を投げるも、しかしそのまま。
「なあ、大丈夫か?」
再び。
すると、ビクリと一震、間宮は外れっぱなしだった赤い双眸を急激に定め、瞬間
「しししし死ぬかとおおお思ったわようぅ」
とガクガクと揺れながら声を漏らした。
「へ…… ?」
「よよよかった、よかった…… 私っ、生きてるっ!」
……って、おい、ちょっとまて!
「は、初めに飛ぶって言い出したのはオマエだろうがっ!」
「だって、こんなに降りる時に怖いなんて、思わなかったんだもん!」
このバカ……