結界対者・第二章-17
「間宮!」
「……これじゃ、ラチがあかないわね。速過ぎて狙えないし、動きを止めようにもアンタの旋風は効かないみたい……」
「……どうする?」
空を睨みながら間宮が黙る……
と、突然その沈黙を僅かにとどめ、赤い瞳を輝かせながら
「ひらめいたっ!」
と叫んだ。
「そのまま、じっとして!」
立ち上がった俺を、指さしながら言い放つ間宮。
かと思えば、突然俺の背後に回り肩に腕を回し背中に胸を……
「って、おい! 何の真似だっ!」
「言う通りにして!」
背中越しに、抱きついた間宮から低い声が漏れる。
「え!?」
「このまま、地面に向かって、全力で風を叩き込むのよ!」
……まさか!
「アタシ達も飛ぶの!」
無茶苦茶だっ!
「ちょっとまてっ! そんな事、出来るかどうか判らないし、仮に出来たとしても空では奴らの方が有利だろうがっ!」
「いいから早くしなさいよっ!」
背中越しに気迫。
「ど…… どうなっても知らないからなっ!」
仕方ない、だが間宮を信じるしかない、だから拳を握り風を集め始める。
敵は頭上を相も変わらず旋回し、此方への撃の機を狙っている。
「大抵の鳥はね…… 」
足もとに集まり始めた風が、二人の髪を舞い上げ始める。
「獲物を捕る為の急降下は出来ても……」
そして、溜り出した風は足元を震わせる。
「自力で急速な上昇は出来ないのよ……」
背中から肩に回された間宮の両腕が、ギュッと力を帯る!
「だから……」
そして風を、集めた風を今…… 放つっ!
「アイツらより高く、全力で飛んでっ!」
間宮が叫ぶ!
瞬間、俺は両手から全てを撃ち出し、激しい閃光にも似た衝撃の中、二人は大地から放たれた!
地表が遠ざかる、このまま空へ…… 空へ!
重力への鮮烈な反逆!
間宮の、腕が、体が、肩に背中に食いこむ!
た…… 高い……
気が付くと地表は遥か、そしてあの鳥の化け物ですら、俺達の眼下に在った。