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結界対者
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結界対者・第二章-13

 考えてみれば、今朝に比べたら昨日の朝は全然マシだった。
 結界だの忌者だのと言われたところで、何がなんだかサッパリだったし、間宮を助けた事に対しての微かな充足感もあったから、これほど迄にナーバスにはならなかった。
 しかし昨日の夕方、サオリさんに色々と説明を聞かされて、自分の置かれている現状を把握した今、俺はある程度の事を理解してしまったが故に、不安と絶望と憂鬱を合わせてかき混ぜた様な気分に圧し潰され……

 いや、とっくに潰されてるんだ。

 だから、こんなにも力が抜けていて、おそらく間抜けな面で空なんか見上げていたりする。

 まったく、この先どうなるんだろうね……

 溜め息をつき、見上げてた視線を元に。
 そして、階段を再び降り始めた時、

「おーい、柊っ!」

足元から張りのある高く透る声が、俺の名前を呼んだ。

「……間宮?」

 見下ろす先で、間宮が相変わらずの不機嫌な表情のままでこちらを、その大きな赤い双眸で鋭く見据えている。

「な…… なんだっ?」
「なんだ、じゃないっ!
タバコ屋のところで待ってたけど、なかなか来ないからさ?
昨日、アンタが歩いてきた方へ、こっちから向かって行ったのよ!
そしたら、ここへ辿りついて……」

 俺がアパートの階段の上に居るのを見掛けた、って事らしい。

「てゆーか間宮、悪いけどさ? お前と待ち合わせした覚えがないんだが?」
「そんなの、こっちにだって無いわよ」
「じゃあ、なんで?」
「昨日言ったでしょ、アンタを見張る!」
「いらねーよ」

 呆れた様に、溜め息混じりに階段を降りると、間宮は更に不機嫌を加速させ

「わ、私だって好きこのんで毎朝来てるんじゃ無いんだからねっ!」

と、叫ぶ様に声を投げる。

 迷惑な奴。

 大体、毎朝って言ったって、まだ二回目だろうが。
 俺は、何も言わずに、大通りへと歩き出す。
 そして間宮は、怒り心頭の面持ちのまま、少し離れて共に歩き出した。

 見張る、とか言ったって、先に歩いて行っちまったら、意味が無いだろうに……

 渋々後に続き、無言のまま勢いよく靴先を進める間宮を追う。
 その小さい背中は、何の迷いも躊躇いもなく、大通りの歩道を進み学校へ…… 今日一日の全てへと向かって歩いていく。


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