恋に恋するお年頃!?B-5
しかし、そんな智久から、とどめの一言。
「小谷、彼氏できたっしょ!?」
「…………っ!」
急な問いかけに驚きすぎて声も出ない。
首がちぎれてしまいそうなほどの強さで左右に振り、否定の意を伝えようとする。
「あれ!?違った?…じゃあ、好きな人ができたんだ?」
どうしてこの人は、ここまで直球で問いかけてくるんだろう。
そう言えば、告白されたときも直球だった……と、関係のないことまでも思い出す。
恵が答えに窮していると、
「あっ、ごめん。デリカシーなさすぎだよね。」
と、今度は智久が慌て始める。
「……じゃ、俺そろそろ行くわ。」
居づらくなったのか、智久は恵を振り返りながら歩き始めていく。
「…あっ。最後に一つだけ。」
数歩進んだところで立ち止まり、恵の目を真っ直ぐに見て言う。
「もし今、好きな奴がいるんだったら、自分の気持ち伝えた方が絶対にいいと思う。俺、小谷に告白できて良かったって思ってるし、告白してなかったら、きっと絶対後悔してた。」
「…どうしてそんなこと言うの?」
さっきから気になっていた疑問を口にする。
「う〜ん、なんでだろ?俺って案外、人の世話焼くのが好きなのかも?(笑)まぁ、特に意味はないよ。ちょっとほっとけない気がしただけ。じゃっ……!」
今度こそ去っていく智久に、恵は軽く手を振る。
そこへタイミング良く、美智子が来た。
「今の中村くん?何話してたの?」
智久に告白されたことは、誰にも話していない。
もう隠している必要もないとは思うが、話すタイミングを逃してしまったのも確かだ。
「別に……。『久しぶり』って。あと、好きな人ができたんじゃないか?って言われた……。」
智久の自分への気持ちは話さずに、簡単に今の会話を伝える。
ちょっとした罪悪感はあるが、告白をされたのが1ヶ月以上も前なのだから、今更という気がしてしまう。
「……やっぱり中村くん、メグのことよく見てるんだね。」
美智子の言葉の意味がわからず、恵はきょとんとする。
そんな恵の様子を気にすることもなく、美智子は続ける。
「中村くんは、絶対メグのこと好きだよ。だから、恋をして変わったメグにも、すぐ気付けたんじゃないかな?」
(どうして、美智子が中村くんの気持ちを知ってるの!?)
恵の頭の中は、もうパニックだ。
自分と智久しか知らないはずの事実を、身近な友達から聞かされたのだから、無理もないだろう。
まぁ、身近にいるからこそ、美智子も智久の気持ちに気付いたのだろうが……。
しかも、今の言い方からすると、智久は今でも恵のことを好きでいるということになる。
自分の身を引いてまでも、恵の恋を応援してくれる智久に敬意の意味も込めて、後悔しないよう、恵は佐藤に気持ちを伝える決意をしたのだった。