恋に恋するお年頃!?B-4
夏休みに入って1週間。
窓の外には、暑さを倍増させるような蝉の鳴き声。
暑さにへばりもしない蝉達に、もはや尊敬すら覚える。
この1週間、恵はまだ学校に行っていなかった。
必然的に、佐藤にも会っていないことになる。
淡々と過ぎる毎日に、悶々とはするものの、どうしたらいいのかわからずにいるうちに、1週間が過ぎてしまったという感じだ。
今日は、いつもの3人で、買い物に行く約束をしている。
明後日に行われる、地元の花火大会に着ていく浴衣を探しに行こうと誘われた。
(花火大会、先生と一緒に行ければいいのに……。)
誘ってみようか?とも思うが、夏休みに入り一度も会っていないため、その機会すらない。
悩んでいても仕方がないので、出かける準備を始める。
時計を見ると、もうすぐ10時になろうとしていた。
待ち合わせは12時。
シャワーを浴びてから、キャミソールにデニムのスカートという出で立ちで、美智子と雅美の待つ駅前へと向かうのだった。
待ち合わせの時計台に着いたのは、約束の20分も前。
(早く着きすぎちゃった……。)
太陽は真上から、恵をギラギラと照らしている。
このまま20分も待っていたら、熱中症にでもなって倒れてしまいそう。
恵は木陰になっている一角に逃げ込み、見るともなく辺りを眺めていた。
すると、改札から出てくる人の中に、恵に気付き近付いて来る人がいる。
「小谷?久しぶり。……って言うのは変か(笑)」
夏休みに入り、少し焼けたようだ。
ほんのり黒くなった顔を緩ませて、智久が恵に近付いて来る。
「……あっ。中村くん。久しぶり。」
智久とこうして話すのは、誰もいない放課後の教室で告白されて以来、初めてのことだ。
智久は気にしていないようだが、恵としては気になってしまう。
最近やっと、『人を好きになる気持ち』というものを理解した。
嬉しくて、楽しいこともあるけれども、その分辛くて、悲しいことがあることも知った。
その上、気持ちを伝えることがどれだけ勇気のいることか、今の恵なら痛いほど感じることができる。
「小谷さぁ、なんか最近変わったよな?なんかあった?」
智久の何気ない一言。
それでも、身に覚えのある恵の心は、穏やかではいられない。
「なんて言うか、前から『いいな』とは思ってたけど、夏休み前からますます可愛くなったような……って、こんなんじゃ俺、未練たらしいな。そんなことは全然ないからっ!安心して。」
急に慌て始める智久の態度に、恵の気持ちも少しは軽くなる。