年上の事情。‐4-2
「おう」
彼の低く、懐かしい声。
「お久しぶりです。あたしは元気です‥」
あたしは部長に言われた通り任務を果たした。
「ぷっ!何だそれ?!」
彼は高らかに、ははっと笑っている。
あっこの顔。
あたしはいつも格好よくピシッと決めている彼の、たまに見せるこの笑顔が好きだったんだ。
その笑顔を見ていっきに緊張が溶けてしまった。
「いや、挨拶をしに‥
あ、コーヒーどうぞ」
「ありがと。
元気そうでよかったよ」
そう言って彼はコーヒーを口にした。
「‥うまい。
やっぱり亜季のいれるコーヒーはうまいな‥」
あーそうだった。この人は2人のときは名前で呼ぶんだった。
「お前、仕事、結構任せられるようになったんだって?」
「そりゃあもう、いい歳ですしぃ、後輩にも恵まれてるから」
あたしはニカッと笑ってみせた。
片山も微笑んでる。
‥あたしはうまく笑えているのだろうか。
「‥プレゼン、頑張ってください」
沈黙が恐くて、あたしはそう言ってその場を離れた。
ずるいよ‥
あたしはミーティングルームを出てすぐ、その場に座り込んでしまった。
あーやっぱりだめだ‥
全然大丈夫なわけない。
そんなの自分が一番分かっていたはずだ。
そうさ、あたしはまだこんなにもドキドキさせられている。
吹っ切れてなんかいやしない。
1年半も引きずっているよ。
仕事が恋人なんて言って、大丈夫なフリなんてしてましたよ。
無理、してましたよ。
今でも、
片山が好きですよ――