年上の事情。‐3-1
「おはようございまーす!亜季姉さん、香姉さん」
あの日から祝さやかはあたし達のことを「姉さん」と呼ぶようになった。
あたしと香ちゃんが一緒に出勤すると新人3人はすでに来ていた。
「すっかり元気だね〜」
祝さんに向かってあたしは言った。
「はいっ!!
いい女になるって決めましたからっ!」
祝さんは「‥らっ!」と同時に、近くにいた鳴海くんをガッと見た。
その瞬間、鳴海くんは見られているのに気付き、顔を赤らめた。
先日、祝さやかは鳴海淳吾に振られた。しかし、「女を磨いて見返す」と、すっかり立ち直ったのだ。
祝さんの立ち直り様と、鳴海くんの赤面した姿にクスッと笑ってしまう。
かわいいなぁ‥
「えっ?何?
なんかあったの?!」
一人ワケの分からない立花くんはキョロキョロしている。
「なっ‥何でもないっ」
鳴海くんはそう言って、その場に居づらかったのか、さらに顔を赤らめて外へ出ていった。
あらら‥
その後、祝さんから説明を受けた立花くんは、意外な鳴海くんの秘密を口にだした。
「アイツ、昔付き合っていた人に振られて、それがトラウマになってるって聞いたことあるな‥」
「えっ?何それ?!
なんでもっと早く言ってくれなかったの?」
祝さんは立花くんに嘆いている。
へぇー‥
どこか他の2人とは落ち着いて見える理由はなにか過去が関係しているのかなと推測してしまった。
その時だった――。
あたしは立花くんと祝さんのやりとりを見ながら横目で部長が出勤してくるのが見えた。
1人ではない。誰かを連れて‥
『うわぁっ!えぇっ?!』
香ちゃんは叫んだ。
それもそうだろう‥
あたしは声も出ない。