ふるさと-1
兎を追うよな山も無く
小鮒釣るよな川も無い
そんな私の故郷だが
嗚呼何故ここまで私を惹くか
何がここまで私を惹くか
ザリガニを追い、田螺や川蜷をいじり、蛍を見た川、何度も落ちたあの川か
かつて住みし家々か
見上げる高さの向日葵を見たあの道か
今も静かに佇む母なる小学校舎か
そこで私を見守っていた樟か
転校後の私を受け入れし父なる小学校舎か
或いは父の実家か
或いは母の実家か
どちらとて私の故郷の一部だ
これだけではない
千余の古墳か
私の足形をつけたコンクリートか
幾百年繰り返し季節を見せる田圃か
五階まで音を響かせていたあの踏切か
八方囲む青く霞みし山々か
そして今は無きあの場所達なのか
いやそれだけではない
そこに生きる人々を忘れてはいけない
私を惹き付けるのは
総じて言うと私がそこに置いてきた想いの数々だ