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伊藤美弥の悩み 〜受難〜
【学園物 官能小説】

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その後の悩み side:R-1

 雨音で、僕は目を覚ました。
 屋根を打つ音はかなり激しくて、何だかやる気が萎える。
 日曜日の今日は、家の中が妙に静か……たぶん、父さんも母さんもまだ寝てる。
 目を開けて枕元の時計を見れば、時刻は七時過ぎだった。
 
 
 初めての人も久しぶりの人も、まずはご挨拶。
 おはようございます。
 今の僕の時間で、挨拶させていただきます。
 僕の名は、高崎龍之介(たかさき・りゅうのすけ)。
 現在大学一年生の、十八歳。
「んむ〜……」
 あ、そうそう。
 僕の隣で快眠を貪っているのが僕の妻、高崎美弥(たかさき・みや)。
 ……変に思われる人、いるかな?
 そう……嘘偽りなく、僕は結婚している。
 高校時代のほとんどを一緒に過ごした恋人へ、僕は卒業式の日にプロポーズした。
 彼女はそれを受け入れてくれて、卒業式の次の日には恋人と同棲するべく家を出て行った僕の兄さんの部屋に、引っ越して来たって訳。
 お義姉さんは妊娠してるっていうし、兄さんも生活が落ち着いてきたら籍を入れる気かな?
 ――美弥がうちに来てから幸せ過ぎて、どうにかなってしまいそうだ。
 毎晩一緒に寝れて、毎朝寝顔が見れる。
 人によっては『くだらない』とか『何をそんな当然の事を』って笑われるかも知れないけれど、これが僕にとっては無上の幸せ。
 まだ成人式にも出てない若造だけど、これからもたくさんの人に出会うんだろうけど、彼女と結婚した事に悔いは全くない。
 むしろこれからは誰よりも近しく……そして共に年を重ねる権利を手に入れる事ができるんだから、もっと早く結婚しとけばよかったと思ってるくらい。
 まぁ……僕の周囲の友人達は、『まだ早い』って笑ってるんだけど。
 まだと形容するからには、彼らも恋人との結婚は多少意識してるんだろうな。
「んん……」
 ごろごろと、美弥が寝返りを打つ。
 慣れない注目で、疲れが溜まってるのかな。
 何しろ、初出社の日には話題になったらしいから。
 まぁ、ご当人も結婚するとは思ってなかったんだから、仕方ないというか当然というか……元凶の僕としては、何とも言えない。
 割と地味に後方へ引っ込んでいるのが好きな美弥と、何故だか自然に目立つ僕。
 ……美弥は何で、僕を好きになってくれたんだろう?
 顔?
 いやいや、美弥は外見で僕を好きになった訳じゃないらしい。
 身長?
 いやいや、今でこそ百八十四センチと背が高いけれど、出会った頃は……サバ読んで百六十五センチなかったんだから、これも除外される。
 心……はないな。
 付き合ってる間中、肝心な所は甘えて頼って……割と情けない。
 小金がある……事はずっと秘密にしてたしなあ。
「む〜……」
 こうして考えると、美弥はどうして僕と付き合ってくれたんだ!?
 いかん、結婚してからこんな問題に気付くなんて……間抜けにも程がある。
 しかし今更、こんな事を尋ねる訳にもいかないしなぁ……。
「んん……」
 っとと。
 呻いた美弥の様子は……よし、まだ寝てるな。
「おやすみ」
 僕は耳元にそう囁いて、美弥の頬をつついた。
「ん……」
 くにゃっと緩んだ顔を見せて、美弥はすーすー眠ってる。
 こんな無防備な寝顔、美弥は他の男に見せた事がない。
 僕しか知らない贅沢。
「……ふ……」
 ありゃ……僕まで眠くなってきた。
 まあ……特に何かする事もないし、二度寝を楽しもうかな。
 柔らかくて温かい抱き枕が、隣にいるんだし。
 
 
 それじゃ、おやすみなさい。


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