『7月7日』-3
でも…
私は焦っていた。
カレの両親に毎日のように子供のコトを聞かれ、挙げ句の果てには『跡取りも生めない女とは別れなさい』、だ。
抗議するカレ。
努力も空しく、私は大金を掴まされて、2人で過ごした家を追い出され、旧姓に戻って、1人なった。
1人になった。
ガチャ
カレがバスルームから出てきた。
腰にバスタオルを巻いた姿で。
私に近付いて来て、私の手からシャンパンの入ったグラスを取り、腰に手を当てて、一気に飲み干す。
「オッサンみたいよ」
部屋とのギャップに笑ってしまう私。
「そう?」
カレのこういうトコロが好き。
飾らないで、どこにいても自然体で。
いつでも、春の風のように優しく、暖かく私を包んでくれる。
「ん」
ベッドに腰掛け、隣をポンポンと叩き、カレが私を促す。
私はカレの隣へ移動する。
カレの手が…
ゆっくりと私の髪に指を通す。
大きな手。
長くて太い指。
目を閉じるとカレの匂い。
5年前と同じ。
5年間同じ。
一緒に居た頃も、別れてからも、ずっと同じ。
閉じた瞼から、熱いものが溢れる。
別れてから5年。
私達は年に1度だけ、こうして逢う。
毎年、7月7日に。
年に1度の逢瀬…
それは、織姫と彦星のように。
部屋の明かりを消して、私達はベッドへと沈んだ――